(未公開)LE CHOIX DES ARMES
ギャルソン! GARÇONS !
(未公開)LA GARCE
作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE
指揮:ピーター・ナイト
Conducted by PETER KNIGHT
演奏:ロンドン交響楽団(「LE CHOIX
DES ARMES」「ギャルソン!」)、チリンギリアン弦楽四重奏団(「LA GARCE」)
Performed by the London Symphony Orchestra (LE CHOIX DES ARMES, GARÇONS !), the
Chilingirian String Quartet (LA GARCE)
(仏Music Box Records / MBR-238)
フィリップ・サルド(1948〜)がイギリス人の指揮者、オーケストレーターのピーター・ナイトと組んで1981〜84年に手がけた3作品のスコアを集めたCD。500枚限定プレス。
「(未公開)LE CHOIX DES ARMES」は、1981年製作のフランス映画(英語題名は「CHOICE
OF ARMS」)。監督は「真夜中の刑事/PYTHON357」(1976)「メナース」(1977)「セリ・ノワール」(1979)「フォート・サガン」(1984)「マルセイユの決着」(2007)等のアラン・コルノー(1943〜2010)。出演はイヴ・モンタン、ジェラール・ドパルデュー、カトリーヌ・ドゥヌーヴ、ミシェル・ガラブリュ、ジェラール・ランヴァン、ジャン=クロード・ドーファン、ジャン・ルージェリ、クリスチャン・マルカン、エチエンヌ・シコ、リシャール・アンコニナ、ピエール・フォルジェ、ローラン・ブランシュ、マルク・シャピトー、ジャン=クロード・ブーイヨー、アントワーヌ・ボー他。脚本はアラン・コルノーとミシェル・グリソリア。撮影はピエール・ウィリアム・グレン。
刑務所を脱獄した受刑者のミッキー(ドパルデュー)とセルジュ・オリヴィエ(フォルジェ)は、敵対する組織の待ち伏せにあってセルジュが負傷する。彼らは、引退して妻ニコール(ドゥヌーヴ)と静かに暮らしていた元犯罪組織のボスであるノエル・デュリュー(モンタン)の邸宅に押し入り、金を要求する。セルジュが息絶えた後、刑事のサルラ(ランヴァン)とボナルド(ガラブリュ)の訪問を受けたノエルは、2人の脱獄囚のことを聞かれ、何も知らないと答える。一旦はパリに逃げたミッキーだったが、ノエルが自分のことを警察に通報したと考え、復讐のためにノエル宅に舞い戻る。ニコールをホテルに逃がしたノエルは、助けを求めるために彼女を昔の組織の仲間のところに差し向けるが……。「いぬ」(1963)「ギャング」(1966)「サムライ」(1967)「仁義」(1970)等の巨匠ジャン=ピエール・メルヴィル監督(1917〜1973)の後継者と考えられていたアラン・コルノーによる犯罪ドラマ(policier)。
「フォート・サガン」(1984)でもアラン・コルノー監督と組んでいるフィリップ・サルドのスコアは、公開当時の1981年に仏General
Musicレーベルから全9曲/約28分収録のサントラLP(General Music
803020)が出ており、その後2001年に仏UniversalレーベルからLPと同内容で「フォート・サガン」とカップリングになったCD(Universal
France 014 115-2)が出ていたが、Music
Boxレーベルが2024年9月にリリースしたこのCDには、新たにマスタリングされたステレオ・アルバム・マスターからのハイレゾ・トランスファーによる同じ9曲が収録されており、音質改善している。
「Le Choix des armes」は、アメリカのベース奏者ロン・カーター(1937〜)とバスター・ウィリアムス(1942〜)の演奏によるメランコリックでドラマティックな主題にオーケストラが加わり、情感豊かでリッチかつドラマティックに展開するメインタイトル。「Noir」は、メインの主題によるクールなジャズにオーケストラが加わり、躍動的かつダイナミックに展開。「En
liberté」は、シンフォニックなワルツ。「Itinéraire en banlieue」は、ベースによるメインの主題にオーケストラが加わりドラマティックに展開する曲。「Duo」は、ベースによるインプロヴァイズ風のジャズ。「La
maison abandonnée」は、ベースとストリングスによるスリリングかつドラマティックな曲。「Soudain dans
un paysage calme」「Rue vide avec petite fille」は、ベースをフィーチャーしたメインの主題のバリエーション。「Le
Choix des armes (Suite)」は、ベースによるメインの主題から様々な主題がドラマティックに展開していく約8分の組曲。極めて上質なオーケストラルスコアで、サルドのベストスコアの1つだろう。
「ギャルソン!(GARÇONS !)」は、1983年製作のフランス映画(日本公開は1987年8月。英語題名は「WAITER!」)。監督は「すぎ去りし日の…」(1970)「夕なぎ」(1972)「ありふれた愛のストーリー」(1978)「愛を弾く女」(1992)等のクロード・ソーテ(1924〜2000)。出演はイヴ・モンタン、ニコール・ガルシア、ジャック・ヴィルレ、ロージー・ヴァルト、マリー・デュボワ、ドミニク・ラファン、ピエール=ルー・ラジョ、ジャン=クロード・ブーイヨー、ニコラ・ヴォジェ、ベルナール・フレッソン、アニック・アラーヌ、クレマンティン・セラリエ、ヴィヴィアン・ブラッセル、イヴ・ロベール、ジェラール・カルデロン他。脚本はジャン=ルー・ダバディとクロード・ソーテ。撮影はジャン・ボフェティ。
パリのとあるブラッスリーでチーフ・ウェイターとして働くアレックス(モンタン)は、海辺のリゾート地に子供たちのための遊園地を作ることを夢見て働いていたが、そのための資金はなかなか集まらなかった。アレックスが資金作りの頼りにしている裕福な既婚者のグロリア(ヴァルト)は、彼の心をつなぎとめようと必死だったが、彼の方は逃げ腰だった。アレックスは、ある日昔の恋人クレール(ガルシア)と再会する。クレールは今の夫とはうまくいっておらず、離婚するつもりだという。彼女はアレックスのアパートにやって来たが、本当に愛しているのは今はアフリカに行っている青年だと彼女の口から聞いて、アレックスはショックを受ける……。
フィリップ・サルドはクロード・ソーテ監督と「すぎ去りし日の…」(1970)「(未公開)はめる/狙われた獲物」(1971)「夕なぎ」(1972)「友情」(1974)「(未公開)MADO」(1976)「ありふれた愛のストーリー」(1978)「(未公開)UN
MAUVAIS FILS」(1980)「ギャルソン!」(1983)「僕と一緒に幾日か」(1988)「愛を弾く女」(1992)「とまどい」(1995)の11作品で組んでいる。この「ギャルソン!」のスコアは、公開当時の1984年に仏Milanレーベルが出したサルドとソーテ監督のコラボレーション作品を集めたコンピレーションLP(Milan
A 222)に6曲が収録されており、同じ6曲が1988年に「僕と一緒に幾日か」の公開に合わせてリリースされたMilanレーベルのコンピレーションCD(Milan
CD CH 318)にも収録されているが、このMusic BoxレーベルのCDには未発表だった「Le pourboire」を含む全7曲/約16分半を収録。
「Garçon !」は、オーケストラにアコーディオンを加えた明るく快活で躍動的なタッチのメインの主題で、賑やかなパリのブラッスリーで活き活きと動き回るギャルソンたちを想わせる楽しい曲。「Le
petit voyage」は、静かにジェントルなイントロから躍動的でややコミカルな主題、ジェントルでリリカルな主題、メインの主題へと展開。「Claire」は、ジェントルなタッチのクレールの主題。「La
journée d'Alex」「Le trampolino」は、ジェントルで明るく快活なタッチの曲。「Le
pourboire」は、フルートによるイントロからメインの主題のバリエーションへ。「Le parc de jeux」は、オーケストラによるスラプスティックなタッチからメインの主題へと展開して締めくくる。
「(未公開)LA GARCE」は、1984年製作のフランス映画(英語題名は「THE
MAN HUNT」)。監督は「ヴィルコの娘たち」(1979)「天使が隣で眠る夜」(1994)「オディールの夏」(1994)等に出演した女優で「不倫の公式」(1995)等の監督作があるクリスティーヌ・パスカル(1953〜1996)。出演はイザベル・ユペール、リシャール・ベリ、ヴィットリオ・メッツォジョルノ、ジャン・バンギギ、ジャン=クロード・ルガイ、ジャン=ピエール・ムーラン、クレモン・アラリ、ダニエル・ジェグー、ジェニー・クレーヴ、ジャン=ピエール・バゴ、マドレーヌ・マリー、ベランジェール・ボンヴォワザン、マド・モーラン、フィリップ・フルトゥン、ブリジット・ギヤルメ他。脚本はアンドレ・マルク・ドゥロク=フールコー、ピエール・ファブル、ローラン・エイヌマンとクリスティーヌ・パスカル。撮影はラウール・クタール。
刑事のルシアン・サバティエ(ベリ)は、ある夜、車から放り出された17歳の少女アリーヌ・カミンケール(ユペール)を保護する。アリーヌを凌辱した罪で逮捕されたルシアンは、6年の刑期を務めた後、私立探偵として働きはじめる。彼はエディット・ウェベールと名を変えたアリーヌに再々するが……。本作を監督したクリスティーヌ・パスカルは、1996年に鬱病で入院していた精神科の病院の窓から身を投げて自殺している。
初収録となるフィリップ・サルドのスコアは、「Prologue」がフィル・ウッズのサックスとジルベール・ルーセルのアコーディオンをフィーチャーした繊細でドラマティックなタッチのプロローグ。これ以降も全編を通して気だるいサックスとアコーディオンが効果的に起用された曲が展開し、サックスとアコーディオンのコンチェルトのようになっている。「Avant
le viol」「Filature nocturne」「Les aveux de Samuel」「Mathilde」は、ドラマティックなタッチの曲。「Fausse
adresse」「Aline et Max」「Fuite d'Aline et Lucien」「Déjà-vu」「Épilogue」「La Garce」は、ジェントルなタッチの曲。「Max」は、躍動的でスリリングなタッチ。「Passage
à tabac」は、サスペンスフルでダイナミックなタッチ。「Petit matin」は、中東風な味付けのジェントルな曲。「Incendie」は、ダークでサスペンスフルなタッチの曲。フィリップ・サルドらしい複雑で繊細なタッチのスコアで、この未発表スコアの収録は貴重。
イングランド、デヴォン州出身のピーター・ナイト(1917〜1985)は、これら3作品の他にフィリップ・サルド作曲の「テス」(1979)「(未公開)Coup
de
torchon」(1981)「海辺のホテルにて」(1981)「(未公開)ゴースト・ストーリー」(1981)「人類創世」(1981)「(未公開)Lovesick」(1983)等のオーケストレーションや指揮を担当しているほか、トレヴァー・ジョーンズ作曲の「ダーククリスタル」(1982)「(未公開)キャプテン・ブーリーの大冒険」(1983)「(未公開/TV)The
Last Place on Earth」(1985)や、ジョルジュ・ガルヴァランツ作曲の「ハンボーン」(1983)のオーケストレーションも手がけている。また、映画音楽以外ではカーペンターズ、ムーディー・ブルース、ペトゥラ・クラークといったミュージシャンとも仕事をしている。
(2024年12月)
Philippe Sarde
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