パラマウント西部劇映画音楽集(2) THE PARAMOUNT WESTERNS COLLECTION - CD2
三人のあらくれ者 THREE
VIOLENT PEOPLE
作曲:ウォルター・シャーフ
Composed by WALTER SCHARF
ゴールデン・キッド KID RODELO
作曲:ジョニー・ダグラス
Composed by JOHNNY DOUGLAS
(未公開)WALK LIKE A DRAGON
作曲:ポール・ダンラップ
Composed by PAUL DUNLAP
(米La-La Land Records / LLLCD 1502)
アメリカのメジャー・スタジオの1つであるパラマウントが製作した西部劇映画11作品のオリジナル音源をCD4枚組(1000枚限定プレス)に収めたコンピレーションで、ここではその2枚目に収録された3作品のスコアを紹介。
「三人のあらくれ者(THREE VIOLENT PEOPLE)」は、1956年製作のアメリカ映画(日本公開は1957年4月)。監督は「海外特派員」(1940)「サハラ戦車隊」(1943)等の撮影や「地球最后の日」(1951)「遥かなる地平線」(1955)「スパルタ総攻撃」(1962)等の監督を手がけているポーランド出身のルドルフ・マテ(1898〜1964)。出演はチャールトン・ヘストン、アン・バクスター、ギルバート・ローランド、トム・トライオン、フォレスト・タッカー、ブルース・ベネット、イレイン・ストリッチ、バートン・マクレーン、ピーター・ハンセン、ジョン・ハーモン、ロス・バグダサリアン、ロバート・ブレイク、ジェイミー・ファー、レオ・カスティッロ、ドン・デヴリン他。レオナード・プラスキンスとバーニー・スレイターの原案を基に「アラモ」(1960)「マクリントック」(1963)「サーカスの世界」(1964)等のジェームズ・エドワード・グラントが脚本を執筆。撮影はロイヤル・グリッグス。南北戦争後、コルト・ソーンダース大尉(ヘストン)は故郷のテキサスに戻る途中でセントルイスから来たというローナ・ハンター(バクスター)と出会い、結婚した。5年ぶりに牧場へ帰ると、親友のイノセンシオ・オルテガ(ローランド)が喜んで迎えてくれたが、弟のボーレガード“シンチ”(トライオン)は牧場の分け前をよこせとコルトに迫った。彼は少年時代の事故で片腕を失くしており、それをコルトのせいだと考えて恨んでいた。一方、テキサス政府の悪徳長官ハリスン(ベネット)、副官のケイブル(タッカー)たちは、土地や牧場に重税を課して強奪しようと企み、コルトの牧場にもやって来るが……。当時パラマウントと複数の映画の出演契約を交わしていたチャールトン・ヘストンが、セシル・B・デミル監督の「十戒」(1957)の完成直後に主演した西部劇。
音楽は「ファニー・ガール」(1968)「夢のチョコレート工場」(1971)「ベン」(1972)「ウォーキング・トール」(1973)等のアメリカの作曲家ウォルター・シャーフ(1910〜2003)。「Paramount
Seal - Revised (Van Cleave) / Three Violent People Prelude」は、ネイザン・ヴァン・クリーヴ(1910〜1970)作曲のパラマウントのロゴミュージックに続いて、ダイナミックでドラマティックな前奏曲へと展開。「Saunders
Apologizes」は、ジェントルなワルツ調の曲で、この主題はコルトとローナのラヴテーマとして「Here Comes the
Bride / The Bedroom / My Wild and Reckless Heart (whistling)」「The Brothers Meet
/ Passion and Pastoral / Hoyt's Ranch」「True Love?」等で何度も繰り返される。「Lorna
Was Her Name」「For Services Rendered」は、ドラマティックなタッチの曲。「Stolen
Horses / The Stampede (extended)」は、ダークなタッチの主題から後半ダイナミックなアクション音楽へ。「The
K.O. of Cinch / Vaya Con Dios」は、ダイナミックな前奏曲の主題から静かにドラマティックなラヴテーマへ。「Cinch's
Showdown」は、ドラマティックなサスペンス音楽。「Three Violent People End Title」は、ジェントルなタッチのエンドタイトル。最後にボーナストラックとして、メランコリックなギターによるソース曲「Guitarioso」と、映画では未使用のラヴテーマの女声ヴォーカル版「My
Wild and Reckless Heart (vocal)」(作詞はベベ・ブレイク)を収録。オーソドックスなドラマティック・スコア。
ウォルター・シャーフは、ジェリー・ルイス主演の一連のコメディ映画(“底抜け”シリーズ)等の音楽で知られる作曲家だが、ネズミの大群による襲撃を描いたスリラー「ベン」の主題歌(少年時代のマイケル・ジャクソンが歌った)で1972年度ゴールデン・グローブの歌曲賞を受賞している。また、ジャック=イヴ・クストーのTVドキュメンタリー「(TV)The
Undersea World of Jacques Cousteau」のスコアで1970年と1974年に2回エミー賞を受賞しており、1971年のクイーン・メリー号上でのクストー美術館展示用に管弦楽曲「生きている海の伝説(The
Legend of the Living Sea)」を作曲している。クラシック音楽の分野では1945年に「パレスチナ組曲(The
Palestine Suite)」を作曲し、ハリウッド・ボウルでレオポルド・ストコフスキーの指揮により初演された。1980年代以降本格的にクラシック音楽に復帰し、「木はまだ立っている(The
Tree Still Stands: A Symphonic Portrait of the Stages of a Hebraic
Man)」(1989)「イスラエル組曲(Israeli Suite)」(1993)等を作曲した。
「ゴールデン・キッド(KID RODELO)」は、1966年製作のアメリカ=スペイン合作映画。監督は「大アマゾンの半魚人」(1954)「追憶」(1957)「(TV)夜空の大空港」(1966)等に出演した俳優で「(未公開)四人のガンマン」(1954)「(未公開)宇宙への挑戦」(1954)「西部の渡り者」(1958)等の監督も手がけているリチャード・カールソン(1912〜1977)。出演はドン・マレー、ジャネット・リー、ブロデリック・クロフォード、リチャード・カールソン、ホセ・ニエト、ミゲル・デル・カスティロ、ホセ・ヴィラサンテ、フリオ・ペーニャ、マイク・ブレンデル、ルイス・バーブー、ビル・クリスマス、フェルナンド・ヒルベック他。「ホンドー」(1953)「マーベリックの黄金」(1971)等のルイス・ラムーアの原作を基にジャック・ナットフォードが脚本を執筆。撮影はマニュエル・メリーノ。キッド・ロデロ(マレー)とジョー・ハービン(クロフォード)は、シェリダンの町に5万ドルの黄金が隠されているとの秘密の情報を入手したが、町に向かう途中でハービンが些細なきっかけからやくざ者を殺したため、2人はユマの監獄にぶち込まれてしまう。もともと無実だったキッドは1年で出獄したが、黄金を1人占めにされたくないハービンは囚人仲間のトーマス・リース(ニエト)と脱獄し、キッドの後を追った。一方、黄金の秘密を嗅ぎつけたインディアンのヤクイ族酋長キャヴァルリー・ハット(ヴィラサンテ)も、一族を率いてシェリダンに向かうのだった……。
音楽は「カサグランデのガンファイター」(1964)「若草の祈り」(1970)「(OV)G.I.ジョー」(1987)等のイギリスの作曲家ジョニー・ダグラス(1920〜2003)。「Kid
Rodelo Main Title (Kid Rodelo Theme) / Guards」「Kid Rodelo Theme」は、静かにメランコリックなタッチのメインの主題。「Escape」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Link's
Death」「Cholla」は、サスペンス調の曲。「Real Gold」「Keep Moving /
Transportation」も、抑制されたサスペンス音楽。「Love Is Trouble (Tom Glazer)」は、アメリカのフォークシンガー、トム・グレイザー作曲のラヴテーマ。「Riding
/ Buzzards & Coyotes」は、抑制されたサスペンス音楽から後半ダイナミックに盛り上がる。「Kid &
Indian」「Indian Attack」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Kid Rodelo Finale
(Love Is Trouble)」は、ラヴテーマをフィーチャーした大らかなタッチのフィナーレ。
ジョニー・ダグラスは、1970年度英国アカデミー賞の作曲賞にノミネートされた「若草の祈り(The
Railway Children)」を含む30本以上の映画音楽を手がけている他、イージーリスニング・アルバムの編曲・指揮で知られ、特にRCAレーベルから80アルバム以上がリリースされていた“Living
Strings”シリーズが有名。テレビ番組用にシャーリー・ジョーンズ、ハワード・キール、ヴェラ・リン、シャーリー・バッシーといった歌手の編曲も手がけた。1983年に自らのレーベル“Dulcima
Records”を立上げ、自身のオーケストラを指揮して多数のイージーリスニング・アルバムをリリースした。また、1999年以降は、交響詩「The
Conquest」「The Aftermath」や、フルート独奏曲「The Blue Damsel-fly」といったクラシック音楽も作曲している。
「(未公開)WALK LIKE A DRAGON」は、1960年製作のアメリカ映画。製作・監督は「大脱走」(1963)「633爆撃隊」(1964)「サタンバグ」(1964)等の脚本や「(TV)将軍
SHOGUN」(1980)「タイパン」(1986)等の原作、「いつも心に太陽を」(1967)「最後の谷」(1970)等の監督・脚本を手がけているジェームズ・クラヴェル(1921〜1994)。出演はジャック・ロード、ノブ・マッカーシー(本名:渥美延)、ジェームズ繁田、メル・トーメ、ジョセフィン・ハッチンソン、ロドルフォ・アコスタ、ベンソン・フォン、マイケル・ペイト、リリヤン・ショーヴィン、ドン・ケネディ、ドナルド・バリー、レスター・マシューズ、マイケル・ロス、チャールズ・アーウィン、トム・ケネディ他。脚本はジェームズ・クラヴェルとダニエル・メインウォーリング。撮影はロイヤル・グリッグス。1870年のカリフォルニア。カウボーイのリンク・バートレット(ロード)は、サン・フランシスコで中国人奴隷のオークションが開催されているのに出くわす。憤りを覚えたリンクは、若い中国人女性キム・サン(マッカーシー)を落札した上で解放しようとするが、彼女はどこにも行く場所がなく、英語も話せなかった。仕方なくリンクはキムを家に連れて帰る。キムはリンクの母(ハッチンソン)に疎まれながらも家政婦として働きはじめ、やがてリンクと愛し合うようになるが……。
音楽は「鬼軍曹ザック」(1950)「野獣部隊」(1959)「ララミー砦」(1959)「虐殺部隊」(1965)等のアメリカの作曲家ポール・ダンラップ(1919〜2010)。パラマウント・ロゴの短いファンファーレ「Paramount
Seal」に続く「Walk Like a Dragon (short version)」は、アメリカのジャズ歌手メル・トーメ(メルヴィン・ハワード・トーメ/1925〜1999)の作曲・ヴォーカルによるメランコリックなタッチの主題歌。「Slave
Market」「Cheng's Shame」「Linc Comes Home」「A Sacred Oath」は、ジェントルなタッチの曲。「Traveling
with a Pretty Purchase」「The American Dress」は、大らかな曲。「Masters
Becomes a Corpse / A Teacher for Cheng」「Kim's Story / Linc Comes Home」は、静かにドラマティックな曲。「The
Death of Deacon / The Avengers」は、ダイナミックなイントロからドラマティックでヒロイックな主題へ。「Kim
Pleads / Walk Like a Dragon Finale」は、ドラマティックなタッチのフィナーレ。最後にボーナストラックとしてパラマウント・ロゴの別バージョン「Paramount
Seal (alternate)」と、主題歌のロングバージョン「Walk Like a Dragon (long
version)」を収録。アジア人が重要な役柄で登場する作品だが、スコアはオリエンタル色を敢えて排し、ストレートなドラマティック・スコアとして表現している。
ポール・ダンラップは、アルノルト・シェーンベルクやナディア・ブーランジェ、エルンスト・トッホといった著名な音楽家に師事した。1950年にサミュエル・フラー監督の「(未公開)アリゾナのバロン(The
Baron of Arizona)」のスコアを手がけて以降、「ショック集団」(1963)「裸のキッス」(1964)といったフラー監督作品や、「コロラドの決闘」(1953)「拳銃稼業」(1955)「ドラゴン砦の決戦」(1957)等のハロルド・D・シャスター監督作品、「三ばか大将」シリーズ等のコメディ作品、低予算のSF/ホラー作品等、200本以上の映画・テレビ番組のスコアを手がけている。また、1968年にハリウッドから一旦引退して以降、ピアノ協奏曲や合唱曲、オペラ等を作曲している。
尚、この4枚組CDの収録作品は以下の通り:
DISC 1
・ネバダ・スミス(作曲:アルフレッド・ニューマン) NEVADA SMITH (Alfred Newman)
・エル・ドラド(作曲:ネルソン・リドル) EL DORADO (Nelson Riddle)
DISC 2
・三人のあらくれ者(作曲:ウォルター・シャーフ) THREE VIOLENT PEOPLE (Walter
Scharf)
・ゴールデン・キッド(作曲:ジョニー・ダグラス) KID RODELO (Johnny Douglas)
・(未公開)WALK LIKE A DRAGON(作曲:ポール・ダンラップ) (Paul Dunlap)
DISC 3
・ウィル・ペニー(作曲:デヴィッド・ラクシン) WILL PENNY (David Raksin)
・決断(作曲:ハリー・サクマン) THE HANGMAN (Harry Sukman)
・烙印(作曲:ロイ・ウェッブ) BRANDED (Roy Webb)
DISC 4
・(未公開)復讐の荒野(作曲:フランツ・ワックスマン) THE FURIES (Franz Waxman)
・銅の谷(作曲:ダニエル・アンフィシアトロフ) COPPER CANYON (Daniele
Amfitheatrof)
・テキサス決死隊(作曲:ヴィクター・ヤング) STREETS OF LAREDO (Victor Young)
(2020年3月)
Walter Scharf
Johnny Douglas
Paul Dunlap
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