パラマウント西部劇映画音楽集(3) THE PARAMOUNT WESTERNS COLLECTION - CD3

ウィル・ペニー WILL PENNY

作曲:デヴィッド・ラクシン
Composed by DAVID RAKSIN

決断 THE HANGMAN

作曲:ハリー・サクマン
Composed by HARRY SUKMAN

烙印 BRANDED

作曲:ロイ・ウェッブ
Composed by ROY WEBB

(米La-La Land Records / LLLCD 1502)

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アメリカのメジャー・スタジオの1つであるパラマウントが製作した西部劇映画11作品のオリジナル音源をCD4枚組(1000枚限定プレス)に収めたコンピレーションで、ここではその3枚目に収録された3作品のスコアを紹介。

「ウィル・ペニー(WILL PENNY)」は、1967年製作のアメリカ映画(日本公開は1968年3月)。監督・脚本は「100挺のライフル」(1968)「(TV)衝撃の告発!QBセブン」(1974)「ブレイクアウト」(1975)「軍用列車」(1975)「ヘルター・スケルター」(1976)「アリ/ザ・グレーテスト」(1977)等のトム・グライス(1922〜1977)で、これは彼の長編映画デビュー作。出演はチャールトン・ヘストン、ジョーン・ハケット、ドナルド・プレザンス、リー・メジャース、ブルース・ダーン、ベン・ジョンソン、スリム・ピケンズ、クリフトン・ジェームズ、アンソニー・ザーブ、ロイ・ジェンソン、G・D・スプラドリン、クエンティン・ディーン、ウィリアム・シャラート、マット・クラーク、ジョン・グライス(aka ジョン・フランシス)他。撮影はルシアン・バラード。腕利きのカウボーイとして知られるウィル・ペニー(ヘストン)は、ある日ダッチー(ザーブ)とブルー(メジャース)を連れて町に出かけたが、途中でクイント牧師(プレザンス)とその息子たち(ダーン、クラーク)とトラブルになり、ダッチーが重傷を負ってしまう。ウィルたちはダッチーを近くの牧場に運ぶが、そこにはカリフォルニアにいる夫に会いに行くというキャサリン・アレン(ハケット)と息子のホレース(ジョン・グライス/監督の実子)がいて、ダッチーの手当てを手伝ってくれた。アレックス(ジョンソン)という男が管理するフラット・アイアン牧場の警備の仕事を頼まれたウィルは、小屋に冬の食糧を運ぶ途中でクイント一家に襲われ、馬と食糧と銃を奪われた。やっとの思いで小屋にたどり着いたウィルは、そこで吹雪に道を阻まれて避難していたキャサリンとホレースに会った。キャサリンは傷ついたウィルを手厚く看病してくれ、ウィルは生まれて初めて愛情の温かさを知るのだった……。サム・ペキンパーが製作しブライアン・キースが主演した1960年のテレビシリーズ「(TV)遙かなる西部(The Westerner)」の1エピソードで、トム・グライスが監督・脚本を手がけた「Line Camp」をベースにしており、このエピソードの撮影もルシアン・バラードが担当している。チャールトン・ヘストンが自身の出演作品中でもお気に入りであると公言していたウエスタン。製作費は約140万ドル。

音楽は「ローラ殺人事件」(1944)「永遠のアムバア」(1947)「悪人と美女」(1952)「アパッチ」(1954)「三人の狙撃者」(1954)「テキサスの五人の仲間」(1965)「ザ・デイ・アフター」(1983)等のアメリカの作曲家デヴィッド・ラクシン(1912〜2004)。短いファンファーレ「Logo」に続く「Will Penny (extended)」は、躍動的でドラマティックなメインの主題。このメインの主題が「One More Hand / The Wholly Family」「Maybe So」「De-Bunking / Fahrwud」「With Boston Charley / Merry Christmas」等でも登場する。「An Eye for an Eye / No Good Way」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽から後半ジェントルなタッチへ。「Quincemeat」は、メインの主題を織り込んだダイナミックなサスペンス音楽。「Behind the Ears / Twixt Sap and Bark」は、ジェントルなタッチの曲。「2/4 D Lean 2」は、静かにドラマティックな曲。「Wagon Fix / Sulpher Little Children / Smoked Cad」は、ダイナミックなアクション音楽。「Farewell / Theme From Will Penny (The Lonely Rider) (Don Cherry, vocal)」は、ジェントルな主題からドン・チェリーのヴォーカルによる主題歌へ(作曲:デヴィッド・ラクシン、作詞:ロバート・ウェルズ)。最後にボーナストラックとしてメインの主題のロック・バージョン「Theme From Will Penny (rock version)」と主題歌のデモ「The Lonely Rider (demo)」を収録。

デヴィッド・ラクシンは、1912年ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれで、ペンシルヴェニア大学でハール・マクドナルドから音楽を学んだ後、ニューヨークでイサドア・フリード、ロス・アンジェルスでアルノルト・シェーンベルクに師事した。1930年代後半から100本以上の映画と300本以上のテレビ番組のスコアを手がけており、1936年にはチャールズ・チャップリン作曲の「モダン・タイムス」のスコアの編曲を手がけた。特に有名なのはオットー・プレミンジャーが1944年に監督した「ローラ殺人事件」の主題曲で、2005年にアメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI)が選んだアメリカ映画音楽の史上ランキングで第7位になっている。また、テレビ番組の音楽では、医療ドラマ「(TV)ベン・ケーシー」(1961〜1966)のスコアを手がけている。晩年には南カリフォルニア大学とカリフォルニア大学ロス・アンジェルス校で教鞭を執っており、彼の死後、2012年に自叙伝『The Bad and the Beautiful: My Life in a Golden Age of Film Music』が出版されている。


「決断(THE HANGMAN)」は、1959年製作のアメリカ映画。監督は「海賊ブラッド」(1935)「ロビンフッドの冒険」(1938)「カサブランカ」(1942)「俺たちは天使じゃない」(1955)「コマンチェロ」(1961)「剣と十字架」(1961)等のハンガリー出身のマイケル・カーティス(1886〜1962)。出演はロバート・テイラー、ティナ・ルイーズ、フェス・パーカー、ジャック・ロード、ジーン・エヴァンス、ミッキー・ショーネシー、シャーリー・ハーマー、ジェームズ・ウエスターフィールド、メイベル・アルバートソン、ホセ・ゴンザレス=ゴンザレス、ベティ・リン、ローン・グリーン、リチャード・コリアー、アブダラ・アッバス、ロバート・アドラー他。ルーク・ショートの原作を基にダドリー・ニコルズが脚本を執筆。撮影はロイヤル・グリッグス。法を守るためには情容赦なく“死刑執行人(ハングマン)”と呼ばれている連邦保安官のマッケンジー・ボヴァード(テイラー)は、強盗犯の一味であるジョニー・バターフィールドという男を追っていた。バターフィールドがノース・クリークに隠れているとの情報を得たボヴァードは、彼をよく知るシラー・ジェニソン(ルイーズ)という女に同行を頼むが、断られる。ノース・クリークの保安官バック・ウェストン(パーカー)は、ボヴァードに協力的だった。ボヴァードは町でバターフィールドの人相書によく似た男を見つけるが、ウェストンによると彼はジョニー・ビショップ(ロード)という町の人気者だった。町の人々は、平和を乱すボヴァードに反感を抱きはじめるのだった……。

音楽は「わが恋は終りぬ」(1960)「ファニー」(1961)「海底世界一周」(1965)「歌え!ドミニク」(1966)「死霊伝説」(1979)等のアメリカの作曲家ハリー・サクマン(1912〜1984)。「The Hangman Prelude」は、ファンファーレから躍動的でヒロイックなメインの主題による前奏曲へ展開。「To Fort Kenton」「Selah's Tempted」は、メインの主題のバリエーション。「Amy Hopkins / Heart-Throb / No Selah」「Pedro and Big Murph / Drop the Handkerchief」「The Plot Thickens」「The Jail Break」は、サスペンス音楽。「Bovard Briefs the Witness」「Anguish」「Witness on Parade」「Bovard's Story」は、ジェントルなタッチの曲。「Johnny's Home」は、トラジックでドラマティックな曲。「Weston Weakens」も、ドラマティックなタッチ。「The Shooting / The Chase」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。ラストの「The Hangman Finale」は、ジェントルなタッチのフィナーレ。

ハリー・サクマンは1912年イリノイ州シカゴ生まれで、10代の頃から音楽の仕事を始めた。彼は1960年の「わが恋は終りぬ」でアカデミー賞のミュージカル映画音楽賞を受賞している他、1961年の「ファニー」で同賞の劇・喜劇映画音楽賞、1966年の「歌え!ドミニク」で音楽(編曲賞)にノミネートされている。また、「(TV)ララミー牧場」(1960)「(TV)バージニアン」(1963〜1964)「(TV)ハイ・シャパラル」(1967〜1971)「(TV)ボナンザ」(1969〜1972)といったテレビの西部劇番組のスコアも手がけている。1979年には、トビー・フーパー監督/スティーヴン・キング原作のホラー映画「死霊伝説」のスコアを作曲している。


「烙印(BRANDED)」は、1950年製作のアメリカ映画(日本公開は1952年6月)。監督は「海外特派員」(1940)「サハラ戦車隊」(1943)等の撮影や「地球最后の日」(1951)「遥かなる地平線」(1955)「スパルタ総攻撃」(1962)等の監督を手がけているポーランド出身のルドルフ・マテ(1898〜1964)。出演はアラン・ラッド、モナ・フリーマン、チャールズ・ビックフォード、ロバート・キース、ジョセフ・カレイア、ピーター・ハンセン、セレナ・ロイル、トム・タリー、ジョン・バークス、ミルバーン・ストーン、マーティン・ギャララーガ、エドワード・クラーク、ジョン・バトラー、カール・アンドレ、サルバドール・バゲス他。エヴァン・エヴァンス(aka マックス・ブランド/フレデリック・シラー・ファウスト)の原作『Montana Rides!』を基にシドニー・ボームとシリル・ヒュームが脚本を執筆。撮影はチャールズ・B・ラング・JrとW・ウォーレス・ケリー。不正な博徒を殺害した罪で追われる身のチョヤ(ラッド)は、テキサスの牧場主リチャード・ラヴァリー(ビックフォード)の財産を狙うT・ジェファーソン・レフィングウェル(キース)という怪しげな男にそそのかされ、ラヴァリーの息子に成りすまして牧場に乗り込んでいった。その息子は5歳の時に誘拐されたままで、チョヤと同じ年頃になっているはずだったので、ラヴァリーも夫人(ロイル)もすっかり彼を信用した。娘のルース(フリーマン)は初め疑いを持っていたが、それもチョヤがうまく納得させた。一方、チョヤから一向に連絡がないことに焦ったレフィングウェルが、早くラヴァリーを殺して財産を相続しろと催促してきた。ルースを愛しはじめていたチョヤは、レフィングウェルの指示を拒み、その代わりにラヴァリーが牛を売って得る1万8000ドルを奪うことで彼を承諾させたが……。

音楽は「キャット・ピープルの呪い」(1944)「血戦奇襲部隊」(1944)「らせん階段」(1945)「汚名」(1946)「十字砲火」(1947)「猿人ジョー・ヤング」(1949)「マーティ」(1955)等のアメリカの作曲家ロイ・ウェッブ(1888〜1982)。「Branded Prelude」は、ダイナミックなイントロから大らかなメインの主題へと展開する前奏曲。「A Short Talk」は、快活なタッチのダンスミュージック。「The Trek」は、メインの主題のバリエーション。「Branded Finale / Cast」は、大らかなタッチのフィナーレ。

ロイ・ウェッブは1888年にニューヨークで生まれ、コロンビア大学で音楽を学んだ後、20代半ばにはブロードウェイで作曲の仕事を手がけていた。1929年にハリウッドに移り、RKOの音楽部長だった親友のマックス・スタイナーから薦められてミュージカル「リオ・リタ」のスコアのオーケストレーションを担当。RKOの作品を中心に(名前がクレジットされていないものも含め)300本以上の映画音楽を作曲した(1937年から1940年にかけて毎年17本以上の作品を手がけており、1939年には1年で26本ものスコアを担当している)。あらゆるジャンルの映画を手がけたが、特にヴァル・リュートン製作のホラー映画「キャット・ピープル」(1942)「(未公開)私はゾンビと歩いた!」(1943)「(未公開)死体を売る男」(1945)や、「らせん階段」(1946)「汚名」(1946)「(未公開)過去を逃れて」(1947)といった犯罪サスペンス映画のスコアで知られる。1961年に自宅の火事で過去に作曲した全ての楽譜を焼失してしまい、そのショックから作曲の仕事を引退。1982年に96歳で心臓発作によりサンタ・モニカで死去した。


尚、この4枚組CDの収録作品は以下の通り:

DISC 1
・ネバダ・スミス(作曲:アルフレッド・ニューマン) NEVADA SMITH (Alfred Newman)
・エル・ドラド(作曲:ネルソン・リドル) EL DORADO (Nelson Riddle)


DISC 2
・三人のあらくれ者(作曲:ウォルター・シャーフ) THREE VIOLENT PEOPLE (Walter Scharf)
・ゴールデン・キッド(作曲:ジョニー・ダグラス) KID RODELO (Johnny Douglas)
・(未公開)WALK LIKE A DRAGON(作曲:ポール・ダンラップ) (Paul Dunlap)


DISC 3
・ウィル・ペニー(作曲:デヴィッド・ラクシン) WILL PENNY (David Raksin)
・決断(作曲:ハリー・サクマン) THE HANGMAN (Harry Sukman)
・烙印(作曲:ロイ・ウェッブ) BRANDED (Roy Webb)

DISC 4
・(未公開)復讐の荒野(作曲:フランツ・ワックスマン) THE FURIES (Franz Waxman)
・銅の谷(作曲:ダニエル・アンフィシアトロフ) COPPER CANYON (Daniele Amfitheatrof)
・テキサス決死隊(作曲:ヴィクター・ヤング) STREETS OF LAREDO (Victor Young)


(2020年3月)

David Raksin

Harry Sukman

Roy Webb

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