マイケル・J・ルイス
  Michael J. Lewis

Date of Birth: 1938/1/11
Place of Birth: Aberystwyth, Ceredigion, Wales, UK
Mini Biography:
Michael John Lewis first performed as a professional musician as a six-year-old choirboy in Aberystwyth, Wales. By the age of ten, he was organist at three churches, where he learned to improvise at weddings while the impatient bridegroom and assembled guests waited for the bride to appear. He moved to London in his late teens to study harmony, counterpoint, and composition at the Guildhall School of Music and Drama. In 1968 British director Bryan Forbes invited him to compose the score for "The Madwoman of Chaillot", for which he earned Ivor Novello Award. 1972 found him in New York working with Anthony Burgess on a Broadway musical "Cyrano", starring Christopher Plummer who won a Tony Award for his performance. Lewis and Burgess received a coveted Grammy nomination. During the years that followed, he produced music for commercials for major American companies such as IBM, Ford, Lowenbrau, Canon, and the U.S. Treasury. His work in television ultimately resulted in an Emmy for his score for the animated film "The Lion, the Witch and the Wardrobe". In 1995 he formed Pen Dinas Productions (Welsh for "chief city", named after the hill in Wales on which he was born), a record label for introducing Welsh music, both traditional and contemporary, to the record-buying public.

 


スフィンクス  SPHINX

作曲・指揮:マイケル・J・ルイス
Composed and Conducted by MICHAEL J. LEWIS

(Promotional)

これは新作映画ではなく、1981年製作のフランクリン・J・シャフナー監督によるミステリ映画のサントラで、公開当時は発売されなかったが、今になって作曲家のプロモーション用に限定枚数がプレスされたものである。映画はロビン・クックの原作を基にしており、レスリー・アン・ダウン扮する女性考古学者が、エジプトの遺跡にまつわる謎を調査していく内に次々と危機に襲われるとうストーリーで、フランク・ランジェラ、モーリス・ロネ、ジョン・ギールガッド等が共演していたが、シャフナー監督(「パピヨン」「猿の惑星」「ブラジルから来た少年」等の名手)にしては水準以下の出来だった。

今回敢えてこの15年以上も前の映画のサントラを取り上げているのは、作曲家のマイケル・J・ルイスの素晴らしいスコアを紹介したいからである。ルイスは25年以上も映画音楽を書き続けているイギリスのベテランで、私自身かなり以前からその実力には注目していたが、どういう訳か彼のスコアのサントラ・アルバムはこれまで殆どリリースされていなかった。それが最近になって、彼の1969年〜1994年の諸作品を再録音したコンピレーションCDがアメリカで発売され、今までビデオやTV放映でしか聴くことができなかったルイスの音楽が、彼自身の指揮による見事な最新録音で再現されて実に感動したものである。このCDに数曲だけ収められていた「スフィンクス」のスコアが今回全曲盤としてリリースされた訳だが、前回のCDで多くの映画音楽ファンに彼の実力が認知されたという事だろう。この音楽はミステリアスなタッチにエキゾチックなフレーバーが加味された情感豊かなオーケストラルスコアで、映画の出来が平凡だっただけに何とももったいない。
(1996年1月)

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北海ハイジャック  ffolkes a.k.a. NORTH SEA HIJACK

作曲・指揮:マイケル・J・ルイス
Composed and Conducted by MICHAEL J. LEWIS

(Promotional)

これは1980年に製作された映画のサントラだが、個人的にアルバム化されることをずっと待ち望んでいたスコアであり、今回(正規なリリースではないプロモーショナル盤ながらも)遂にそれが実現した。

映画自体はほとんど知られていないと思うが、これまたアクション映画の隠れた傑作である。ロジャー・ムーアがルーファス・エクスカリバー・フォルクスという偉そうな名前の、女嫌いで猫好きで酒飲みで刺繍が趣味の頑固者イギリス人に扮しているが、彼の役者としてのキャリアの中で最も個性的で魅力的なキャラクターであり、本人も嬉々として演じている。ムーア扮するフォルクスは英国のロイズ保険会社と契約している私設潜水チームのリーダーで、アンソニー・パーキンス率いるテロリスト一味が北海油田の石油掘削基地に爆弾を仕掛け、補給船をハイジャックして英国政府に身代金を要求したことからテロリストたちと対決することになる。ムーアとパーキンスのCat and Mouseの頭脳戦は「ダイ・ハード」以降のハリウッド製アクション映画にも通ずるものがあり、特に秒単位で襲撃作戦を実行に移すクライマックスが実にスリリング。監督は西部劇や「ワイルド・ギース」等の職人監督アンドリュー・V・マクラグレンだが、この作品は彼にとってもベストの1つだと思う。

イギリスのベテラン作曲家、マイケル・J・ルイスによる音楽はまさしくパーフェクトなアクション・スコアで、英国の冒険家気質をそのまま具現化したような勇壮かつダイナミックなサウンドが素晴らしい。長い間待った甲斐があった。
(1998年4月)

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シラノ(ミュージカル) CYRANO (Musical)

作曲:マイケル・J・ルイス
Music by MICHAEL J. LEWIS

作詞:アンソニー・バージェス
Lyrics by ANTHONY BURGESS

(米Decca / B00004083-02)

cover
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これは映画音楽ではなく、1973年製作のブロードウェイ・ミュージカルのオリジナル・キャストによるレコーディングで、過去にLP(2枚組)で出ていたアルバムを2005年に初CD化したものである。よってフィルムスコアのサントラではないが、イギリスの映画音楽作曲家マイケル・J・ルイスが音楽を作曲しており、彼の傑作の1つでもあるのでここで紹介したい。フランスの作家エドモン・ロスタン(1868〜1918)の有名な原作「シラノ・ド・ベルジュラック」をベースにしたミュージカルで、演出は「いつも上天気」(1955)「(未公開)輝け!ミス・ヤング・アメリカ」(1975)「スキン・ディープ」(1989)等の映画出演作や、「僕はツイてる」(1958)等の監督作もあるマイケル・キッド「時計じかけのオレンジ」(1971)の原作や「ナザレのイエス」(1977)の脚本で知られるアンソニー・バージェスがロスタンの原作を脚色し、作詞も担当している。出演はクリストファー・プラマー、リー・ビーリィ、マーク・ラモス、ジェームズ・ブレンディック、パトリック・ハインズ、ルイ・テュランヌ、アーノルド・ソボロフ、J・ケネス・キャンベル、アニータ・ダングラー、ジェフ・ガーランド、マイケル・グッドウィン、アレクサンダー・オーファリー他。製作はリチャード・グレグソン。

クリストファー・プラマーはカナダ出身の映画・舞台俳優で、「サウンド・オブ・ミュージック」(1964)のフォン・トラップ大佐役が有名だが、「ローマ帝国の滅亡」(1964)「トリプルクロス」(1966)「ワーテルロー」(1969)「ピンク・パンサー2」(1975)「王になろうとした男」(1975)等の出演作や「(未公開)名探偵ホームズ/黒馬車の影」(1979)でのシャーロック・ホームズ役でも知られる。「サイレント・パートナー」(1978)「(TV)赤と黒の十字架」(1983)「(未公開)ドリームスケープ」(1984)「スター・トレックVI/未知の世界」(1991)等では悪役もこなしている演技派であり、最近でも「インサイダー」(1999)「ラッキー・ブレイク」(2001)「ビューティフル・マインド」(2001)「アレキサンダー」(2004)「ナショナル・トレジャー」(2004)と数多くの映画に出演しているベテラン。プラマーは、1955年にホールマークTVが製作した「シラノ・ド・ベルジュラック」でクリスチャン役を演じている(シラノ役はホセ・ファーラー、ロクサーヌ役はクレア・ブルーム)他、1962年の舞台(ミュージカルではない)と同年のTV映画でシラノ役を演じている。彼は、ここで紹介しているミュージカル版「シラノ」の主役で、1974年度トニー賞の最優秀男優賞を受賞している。

エドモン・ロスタンの「シラノ・ド・ベルジュラック」は、これまでに何度も映画化されているが、有名なものには1950年にスタンリー・クレイマーが製作し、マイケル・ゴードンが監督した「シラノ・ド・ベルジュラック」(主演のホセ・ファーラーが1950年度アカデミー賞の主演男優賞と、ゴールデン・グローブの男優賞(ドラマ)を受賞。音楽はディミトリ・ティオムキン)や、1987年にフレッド・スケピシが監督し、スティーヴ・マーティン、ダリル・ハンナが主演した現代版「愛しのロクサーヌ」(音楽はブルース・スミートン)、そしてフランスの名匠ジャン=ポール・ラプノー監督が1990年にジェラール・ドパルデュー、アンヌ・ブロシェ、ヴァンサン・ペレーズ出演で映画化した「シラノ・ド・ベルジュラック」がある(音楽はジャン=クロード・プティ)。このラプノー監督作品は1990年度セザール賞の作品賞、監督賞他計10部門を受賞している。

17世紀フランス。頭脳明晰で詩の才に秀で、剣の腕前も一流の近衛隊長シラノの唯一のコンプレックスは人並みはずれて巨大な鼻。そのせいで幼馴染みの従妹ロクサーヌ(このミュージカルでは名前がロクサーナに変更されている)に愛する気持ちを打ち明けられないでいる。同じ部隊の兵士クリスチャンから、ロクサーナへの恋の想いをいかに表現してよいのか相談されたシラノは、自らの心の内を押し隠し、クリスチャンのためにラブレターを代筆してやる…。

このCDは、いかにもマイケル・J・ルイスらしい躍動的で明るくパワフルな序曲「Overture」で幕を開ける。オーケストラ曲は全編を通してこの曲だけだが、ミュージカルの序曲らしく挿入歌がメドレーの形で次々と登場し、スワッシュバックリングなタッチでシラノの心意気を讃えている。「Nose Song」は、シラノが自分の大きな鼻をいかに“詩的に”に侮辱するべきかをコミカルに歌い上げる曲。「Tell Her」では、隊長のル・ブレがシラノにロクサーナへの愛を告白するべきだと説得し、シラノがそれはできないと反論していると、ロクサーナの侍女がシラノに「彼女が会いたがっている」との伝言を届けたことで、明るく盛り上がる。「From Now Till Forever」は、ロクサーナが自分を愛しているかもしれないと思い有頂天になったシラノが、100人の敵を倒しに出かけていく前に歌う陽気でパワフル曲。「Bergerac」は、パン屋でおち会ったロクサーナとシラノが、子供の頃にベルジュラックで一緒に過ごした思い出を語り合うチャーミングな曲。「No Thank You」は、ロクサーナから「クリスチャンを愛している」と告白され落胆したシラノが、後で怒りをぶちまける曲。「Roxana」は、クリスチャンがシラノに教えてもらったセリフでロクサーナへの愛を告白をしようとするシーンのロマンティックな曲。「It's She and It's Me」は、クリスチャンがやはり自分のセリフでロクサーナに愛を告げたいと歌い上げる曲。が、彼の言葉のつたなさから、これは大失敗に終わる。バルコニーに現れたロクサーナに対し、シラノは姿を隠し、クリスチャンのふりをして詩的なセリフでロクサーナへの愛を告白する。「You Have Made Me Love」は、その言葉の美しさに感動したロクサーナが歌う曲で、ルイスの個性がよく出た実に感動的な曲。「Thither, Thother, Thide of the...」は、好色なド・ギーシュをクリスチャンとロクサーナから遠ざけるために、シラノがおどけて歌うコミカルな曲。プラマーの絶妙のセリフ回しが見事。「Pocapdedious」は、戦闘へと向う兵士たちが歌う、男声コーラスによる勇壮で陽気なマーチ。「Paris Cuisine」は、戦場で空腹に苦しむ兵士たちが、パリの美食を想い歌う陽気な曲。「Love Is Not Love」は、クリスチャンが戦場から書いたラブレター(実はシラノが書いている)に心を打たれたロクサーナが、戦場まで駆けつけてクリスチャンに「あなたの外見だけでなく魂を愛している」と告げるロマンティックな曲。「Autumn Carol」は、クリスチャンが戦死したことで、尼僧となって修道院に入ったロクサーナが、クリスチャンへの永遠の愛を歌うセンチメンタルな曲。「I Never Loved You」は、自分を真に愛してくれていたのはシラノであったと気付いたロクサーナに、瀕死のシラノが「君を愛したことはない」と最後のストイシズムを貫くシーンのドラマティックな曲。

マイケル・J・ルイスが手がけた映画音楽には「シャイヨの伯爵夫人(The Madwoman of Chaillot)」(1969)「(未公開/TV)Upon This Rock」(1970)「(未公開)悪魔の虚像/ドッペルゲンガー(The Man Who Haunted Himself)」(1970)「ジュリアス・シーザー(Julius Caesar)」(1970)「若いけものたち(Unman, Wittering and Zigo)」(1971)「(未公開)Running Scared」(1972)「(未公開)バクスター!(Baxter!)」(1973)「(未公開)シェークスピア連続殺人!!血と復讐の舞台(Theatre of Blood)」(1973)「(未公開)Die Verrohung des Franz Blum」(1974)「新・おしゃれ泥棒(11 Harrowhouse)」(1974)「(未公開)Russian Roulette」(1975)「(未公開)92 in the Shade」(1975)「(未公開)The Stick-Up」(1977)「レガシー(The Legacy)」(1978)「メドゥーサ・タッチ 恐怖の魔力(The Medusa Touch)」(1978)「(未公開/TV)Kean」(1978)「(未公開/TV)The Lion, the Witch and the Wardrobe」(1979)「(未公開)パッセージ・死の脱走山脈(The Passage)」(1979)「北海ハイジャック(North Sea Hijack / ffolkes)」(1980)「(未公開/TV)Jessie」(1980)「スフィンクス(Sphinx)」(1981)「恐怖のいけにえ(The Unseen)」(1981)「(未公開)Yes, Giorgio」(1982)「(未公開)On the Third Day」(1983)「(未公開/TV)シャーロック・ホームズ/バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」(1983)「(未公開)Growing Pains」(1984)「(未公開)露骨な顔(The Naked Face)」(1984)「(未公開/TV)The Rose and the Jackal」(1990)「(未公開/TV)She Stood Alone」(1991)「(未公開)デッドリーターゲット/襲撃(Deadly Target)」(1994)等がある。
(2005年4月)

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