Editor's Choices
(Part 2)


(未公開)砂漠の勇者 The Lighthorsemen

作曲:マリオ・ミロ
Composed by Mario Millo

指揮:ウィリアム・モツィング
Conducted by Williams Motzing

演奏:ヴィクトリア交響楽団
Performed by the Victorian Symphony Orchestra

(オーストラリア1M1/CD1009)

★TOWER.JPで購入(Dragon's Domain盤) 

1987年製作のオーストラリア映画。第一次大戦におけるオーストラリア軽騎兵部隊の砂漠での活躍を描く。監督はサイモン・ウィンサー、脚本はイアン・ジョーンズが担当。出演はジョン・ブレイク、ピーター・フェルプス、ニック・ウォーターズ、トニー・ボナー、ビル・カー、ジョン・ウォルトン、ティム・マッケンジー、シグリッド・ソーントン、アンソニー・アンドリュース他。音楽はオーストラリアの作曲家マリオ・ミロで、これは彼の作品中でも最もスケールの大きいエピック・スコア。舞台となる中東のフレーバーを帯びたオープニング・タイトルの「Palestine」や、フルオーケストラによる力強い「Horses and Train」等、どの曲にも純粋に映画音楽的なパワーとエモーションが溢れている。ハイライトは冒頭に収録された「The Lighthorsemen (End Title)」で、いかにもオーストラリアの作曲家らしい大らかさを感じさせる豪快なマーチとなっている。ミロは日本ではあまり知られていない作曲家だと思うが、サントラアルバムとしてはこれ以外にも 「(未公開)Against the Wind」(豪Polydor)、「(未公開)A Fortunate Life」(豪Polydor)、「(未公開)Shame」(米DRG、以上全てLPでのリリース)、「(未公開)ポーズ! おしゃべりパソコン犬危機一髪!(PAWS)」(豪Larrikin)等があり、この中では「A Fortunate Life」が非常に繊細で上質なスコアで良い。同じオーストラリアの作曲家でもブライアン・メイのような暗さはなく、ブルース・ローランドよりも硬派といった感じ。

Mario Millo

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砂漠のライオン Lion of the Desert

作曲・指揮:モーリス・ジャール
Composed and Conducted by Maurice Jarre

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra

(英Silva Screen / FILMCD 060)

 ★TOWER.JPで購入(Tadlow/Complete盤)

アンソニー・クインが実在のリビアの英雄オマー・ムクターを演じる1981年製作のリビア=イギリス合作映画。監督はムスタファ・アッカド、脚本はH・A・L・クレイグ。共演はオリヴァー・リード、イレーネ・パパス、ロッド・スタイガー、ジョン・ギールガッド、ラフ・ヴァローネ、ガストン・モスチン、アンドリュー・キアー、スカイ・ダモント、ロバート・ブラウン、タキス・エマニュエル他。撮影はイギリスのベテラン、ジャック・ヒルデヤード。20世紀初頭にイタリアの独裁者ムッソリーニ(スタイガー)によるリビア占領政策に立ち向かった、オマー・ムクターの半生を描く。ムクターを倒すためにムッソリーニに送り込まれる冷酷な指揮官をオリヴァー・リードが演じる。スコアは「砂漠音楽」のエキスパート、モーリス・ジャール。彼はデヴィッド・リーン監督の「アラビアのロレンス」の音楽があまりに有名だが、この「砂漠のライオン」でも大編成オーケストラによるスペクタキュラーなエピック・スコアを展開している。特に全編に繰り返し現れる戦闘シーンでは、彼の得意とするパーカッションを効果的に使用したダイナミックな音楽を書いており、正に職人的な巧さである。ラストの勇壮で力強いマーチもいかにもジャールらしい名曲。彼がパーカッションを専攻したのは、音楽の道に進もうとした時点でピアノを習得するには指が発達しすぎており、友人で著名な指揮者のシャルル・ミュンシュの助言に従ったためだという。更に彼はアラブ音楽も専攻しており、この映画や、同じムスタファ・アッカド監督=アンソニー・クイン主演の「ザ・メッセージ(Mohammad: Messenger of God)」(1976)でも、オーセンティックなアラビック・スコアを提供している。このSilva ScreenレーベルのCDは、「砂漠のライオン」と「ザ・メッセージ」を1枚にカップリングしたもので、ジャールのエピック・スコアが堪能できる好アルバムとなっている(サントラLPは個別にリリースされていたが、いずれも入手困難)。

= 2010年4月追加 =

英Tadlowレーベルより「砂漠のライオン」のリミックス/リマスターされたコンプリート・スコアの2枚組CDがリリースされた(2000枚限定プレス)。同じくリマスターされた「ザ・メッセージ」と、ジャールによるカンタータ「GIUBILEO」の初録音も併せて収録(英Taldow / TADLOW08)。

Maurice Jarre

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指輪物語 The Lord of the Rings

作曲・指揮:レナード・ローゼンマン
Composed and Conducted by Leonard Rosenman

(米Fantasy / D 19928)

cover
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霊力に支配された世界での全能の「指輪」を廻る物語を描いた、J・R・R・トールキン原作のファンタジー3部作の途中まで("The Fellowship of the Ring"と"The Two Towers")を映画化した1978年製作のアニメーション。監督は「フリッツ・ザ・キャット」のラルフ・バクシ。脚本はクリス・コンクリングとピーター・S・ビーグルが担当。声の出演は、クリストファー・ガード、ウィリアム・スクワイア、ジョン・ハート、マイケル・ショールス、ドミニク・ガード他。実写で撮影したフィルムをコマ単位でトレースして自然な動きを実現する「ロトスコーピング」技術を採用している。音楽はベテランのレナード・ローゼンマンが担当。彼は「エデンの東」の有名なテーマ曲の作曲者としてよく引き合いに出されるが、あの親しみやすい曲の印象とは対照的に非常に前衛的なスコアを書く人で、「続・猿の惑星」「馬と呼ばれた男」「ミクロの決死圏」「故郷への長い道/スター・トレック4」「ロボコップ2」等に極めて独創的な劇音楽を提供している。常に実験的な試みをすることでも知られ、ここではエンドタイトルに流れる「指輪物語のテーマ」(マーチ)がスコアのクライマックスとなっており、全体を通してこの曲の一部分が少しずつ登場して発展していき、最後に完成形に達して全貌が明らかになるというテクニックを用いている。この最後のマーチがローゼンマンらしい非常にユニークな曲で素晴らしい。また、全体で80分に及びスコアの大半が戦闘シーンを描写した複雑で前衛的な音楽であり、これとのコントラストを際立たせるめに非常にリリカルで美しい「ミスランディアー」という歌曲を途中に挿入している。これはグスタフ・ホルストの「惑星」の中の「木星」のパッセージを想わせる、実にファンタスティックで美しい曲である。尚、このスコアにはIntradaレーベルが1991年にリリースした再発盤があり(米Intrada / FMT 8003D)、ここではオリジナルのLPに収録されていなかった4曲(約12分)を追加し、全体をストーリーの順序に並べ替え、更に元の24トラックテープからリミックスしてより広がりのあるサウンドを実現している(但しLPの冒頭に収録されていたメインテーマのマーチは、エンドタイトルの単なるリプライズであるとの理由で削除されている)。ここで紹介しているFantasyレーベルのCDはオリジナルのLPの音源をそのままCDにしたもの。

Leonard Rosenman

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(未公開)スノーリバー/輝く大地の果てに The Man from Snowy River

作曲・指揮:ブルース・ローランド
Composed and Conducted by Bruce Rowland

(米Varese Sarabande / VCD 47217)

cover
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★TOWER.JPで購入 

1982年製作のオーストラリア映画。監督はジョージ・ミラー(「マッド・マックス」「イーストウィックの魔女たち」「ベイブ」等のジョージ・ミラーとは別人)。出演は、カーク・ダグラス、ジャック・トンプソン、トム・バーリンソン、シグリッド・ソーントン、ロレイン・ベイリー、トミー・ダイサート、ブルース・カー他。脚本はジョン・ディクソンとフレッド・カル・カレンが担当。製作総指揮はマイケル・エドグリーとサイモン・ウィンサー。大牧場主の下に働きにやって来て彼の娘と恋に落ちる若者を描く、A・B・“バンジョー”パターソン作の詩を基にした、スケールの大きいウェスタン。音楽はオーストラリアの作曲家ブルース・ローランドが担当。明るく爽やかなメインテーマや、ダイナミックで躍動的なチェイス・シーンの音楽等が印象的なスコア。オーケストラの規模はそれほど大きくないが、アメリカの西部劇音楽とは少し違った独特の素朴さを感じさせるところが面白い。エンドタイトルに「ワルツィング・マチルダ」(「渚にて」というSF映画の主題曲にもなったオーストラリアの有名な曲)がチラっとQuoteされている。ローランドはこのスコアで1982年のオーストラリア映画協会の音楽賞を受賞している。彼はこの作品のサントラで実力が注目されて以来、この映画の続編である「(未公開)遥かなるスノー・リバー(Return to Snowy River Part II: The Legend Continues)」(米Varese Sarabande)や、「(未公開)Phar Lap」(豪EMI)「(未公開)Lightning Jack」(豪Festival)「アンドレ/海から来た天使(Andre)」(米Milan)等のサントラアルバムがリリースされている。また、作曲者自身の指揮によるメルボルン交響楽団の演奏で「Man from Snowy River」「Return to Snowy River」「Phar Lap」「All the Rivers Run」を収録した「Bruce Rowland: Film and Television Themes」というコンピレーションもある(米Bay Cities / BCD 3009)。1999年には、「(TV)地底探検/アース・エクスプローラーズ(Journey to the Center of the Earth)」(米Varese Sarabande)というTV映画のサントラが出ている。

Bruce Rowland

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(未公開)燃える男 Man on Fire

作曲・指揮:ジョン・スコット
Composed and Conducted by John Scott

演奏:グランケ交響楽団
Performed by the Graunke Symphony Orchestra of Munich

(米Varese Sarabande / VCD 47314)

1987年製作のフランス=イタリア合作映画。日本でもファンの多いベストセラー作家A・J・クィネル原作による元傭兵クリーシィを主人公にしたシリーズ第1作目「燃える男」の映画化。監督はフランス人のエリ・シュラキ。脚本は、「続・夕陽のガンマン」「復讐のガンマン」「血闘のジャンゴ」「ウェスタン」「夕陽のギャングたち」「オルカ」等のベテラン、セルジオ・ドナティと監督のシュラキが担当。出演はスコット・グレン、ジェイド・マル、ブルック・アダムス、ジョナサン・プライス、ジョー・ペシ、ダニー・アイエロ、ポール・シェナー、ルー・カステル他。製作はアーロン・ミルチャン。イタリアを舞台に、実業家(プライス)の12歳の娘サマンサ(マル)のボディガードとして雇われたクリーシィ(グレン)が、サマンサを誘拐したマフィアを相手に単身戦いを挑む、というアクション作品。スコット・グレンは原作のクリーシィのイメージに近く、脇を固めるキャストも良いが、演出が緩慢で緊張感がなく、映画としては水準以下の出来。クィネルの小説はどの作品も着想やストーリー展開が秀逸で、映像化に適した題材だと思うが、実際に映画化されているのはなぜかこの作品だけである。ジョン・スコットの音楽は、ストイックかつドラマティックなメインタイトル「Man on Fire」が素晴らしい。この曲の後半はクリーシイとサマンサの友情を表現した感動的なテーマへと展開するが、このテーマは「Sam Wins the Race」「Becoming Friends」「We've Got Each Other」といった曲に繰り返し登場する(この映画とは無関係に「ダイ・ハード」のラストシーンにも流用された)。途中のサスペンスシーンのスコアも緊張感があり手堅いが、何といってもこの冒頭の曲の深みとエモーショナルなスケールの大きさがこのアルバムの魅力である。スコットのベストスコアの1つだと思う。同様のタッチのアクション・スコアでは、「影なき男(Shoot to Kill)」が傑作だが、これは今のところサントラが出ておらず、スコット自身がロイヤル・フィルを指揮した下記コンピレーションCDにエンドタイトルのみが収録されている。

「SCREEN THEMES」John Scott conducts the Royal Philharmonic Orchestra
(Varese Sarabande / VSD-5208)1988

John Scott

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王になろうとした男 The Man Who Would Be King

作曲・指揮:モーリス・ジャール
Composed and Conducted by Maurice Jarre

演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra

(米Bay Cities / BCD 3007)

ノーベル賞作家ラドヤード・キップリングの原作を基に、ジョン・ヒューストン監督が1975年に製作した冒険映画。脚本はヒューストンとグラディス・ヒルが執筆。出演はショーン・コネリー、マイケル・ケイン、クリストファー・プラマー(キップリング役)、サイード・ジャフリー他。撮影はオズワルド・モリス。イギリス軍人のドレイボット(コネリー)とカーニハン(ケイン)は、莫大な富を求めてヒマラヤを越え、秘境カフィリスタンへとやって来る。彼らは未開の部族に英国式の軍事訓練を施すが、ある日ドレイボットの胸にかけられたフリーメイソンのメダルを見た部族の長は、彼を神と信じ込む……。ヒューストンはこのキップリングの短編小説の映画化を20年もの間暖めてきており、当初はクラーク・ゲーブルとハンフリー・ボガートの共演で撮ろうとしていた(が、二人とも監督より先に死んでしまった。この二人が共演した映画はない)。マイケル・ケインはヒューストンに初めて会ってカーニハンの役をオファーされた時に、ボガートがその役を演じるはずだったと聞いて脚本も読まずにその場で出演を決めたという。また、この映画の中でコネリーの正体を暴くカフィリスタン女性を演じているシャキラ・ケインはマイケル・ケインの妻で、偶々撮影に同行していたが、元々この役を演じるはずだった女優が突然降板したため、急遽出演が決まったらしい。音楽を担当しているモーリス・ジャールは、この映画以外に「ロイ・ビーン(The Life and Times of Judge Roy Bean)」「マッキントッシュの男(The Mackintosh Man)」でもヒューストン監督と組んでいるが、彼らのコラボレーション中では明らかにこの作品がベストである。「Minstrel Boy」のフレーズによるイントロから英国調の軽快なマーチとなり、途中にインド音楽のパッセージが入って、フルオーケストラによるマーチのリプライズで締めくくるメインタイトルが、いかにもジャールらしい冒険心に溢れた名曲。「Minstrel Boy」はラストで吊り橋に追いつめられたコネリーとケインが歌う曲で、本CDにも二人の歌声が収録されているが、この選曲はヒューストンの意向らしい。スコアは主人公二人のテーマである英国調のマーチとインド音楽との組合わせになっているが、後者についてはSarangi、Sarodといったインド楽器の奏者をスタジオに連れてきて、ナショナル・フィルと共に録音した。因みにジャールはパリのコンセルヴァトワール(国立高等音楽院)で、アラブ、ロシア、インド、日本、アメリカ南部の音楽を専攻しており、結果としてこの全ての地域に該当する映画の音楽を手がけている。

Maurice Jarre

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(未公開)モンシニョール・キホーテ Monsignor Quixote

作曲・指揮:アントン・ガルシア・アブリル
Composed and Conducted by Anton Garcia Abril

演奏:イギリス室内管弦楽団
Performed by English Chamber Orchestra

(英Red Bus / CDRBLP1010)

1985年にイギリスで製作されたTV映画。グレアム・グリーンの原作をクリストファー・ニームが脚色し、ロドニー・ベネットが監督。出演はアレック・ギネス、レオ・マッカーン、イアン・リチャードソン、グレアム・クロウデン、モーリス・デンハム、フィリップ・ストーン、ロザリー・クラッチリー、ヴァレンタイン・ペルカ、ドン・フェローズ他。スペインの小さな村、エル・トボソの教区に勤めるキホーテ神父(ギネス)が、大司教(モンシニョール)に任命されたことから、それを祝福するために、彼とその地方の共産主義の政治家(マッカーン)の二人は、ちょうど神父の先祖ドン・キホーテがしたように、マドリッド、サラマンカ、ヴァラドリッド、ガリシアと旅をしていく。映画は非常に地味な内容だが、スペインのベテラン作曲家アントン・ガルシア・アブリルによる音楽が素晴らしい。このアルバムはサントラではなく、映画のために書いたスコアをアブリル自身が「The Monsignor Quixote Suite」として全11曲の組曲にまとめたもの。主人公たちの旅を通じて、スペインの田園風景や都会の町並みの情景を一つ一つ丹念に描いていった風景画のような組曲で、どの曲も極めてカラフルかつ叙情性豊かで美しい。イギリス室内管弦楽団の端麗な演奏も見事で、正に珠玉の名曲を集めた組曲となっている。アブリルは1933年テルエル生れで、スペインでは多数の映画音楽を手がけているが、アルバムとしては「(未公開)Fortunata y jacinta」(スペイン Hispavox)「(未公開)Mata-Hari」(スペイン Polydor)や、ウェスタンの「ガンマン無頼(Texas, Addio)」等がある。

Anton Garcia Abril

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オリエント急行殺人事件 Murder on the Orient Express

作曲:リチャード・ロドニー・ベネット
Composed by Richard Rodney Bennett

指揮:マーカス・ドッズ
Conducted by Marcus Dods

演奏:ロイヤル・オペラハウス管弦楽団、コヴェント・ガーデン
Performed by the Royal Opera House Orchestra, Covent Garden

(EMI / TOCP-6588)

cover
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アガサ・クリスティの有名なミステリ小説を国際色豊かなオールスター・キャストで映画化した1974年製作のイギリス映画。監督は「12人の怒れる男」「狼たちの午後」「ネットワーク」「デストラップ・死の罠」「評決」等ミステリや社会派ドラマを得意とするシドニー・ルメット。出演はアルバート・フィニー、ローレン・バコール、マーティン・バルサム、イングリッド・バーグマン、ジャクリーン・ビセット、ジャン=ピエール・カッセル、ショーン・コネリー、ジョン・ギールガッド、ウェンディ・ヒラー、アンソニー・パーキンス、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、レイチェル・ロバーツ、リチャード・ウィドマーク、マイケル・ヨーク、コリン・ブレイクリー、ジョージ・クールーリス他。脚本はポール・デーン、撮影はジェフリー・アンスワースが担当。原作はクリスティが1934年に書いた名探偵エルキュール・ポワロもので、イスタンブール発のオリエント急行に乗り合わせたポワロ(アルバート・フィニー)が、列車内で起きた殺人事件の謎を解くというストーリー。ラストで出演者たちが一人ずつ画面に現われて乾杯していくシーンが、舞台劇でのカーテンコールのようで印象的だった。1974年度アカデミー賞の主演男優賞(フィニー)、助演女優賞(バーグマン)、脚色賞、撮影賞、作曲賞、衣裳デザイン賞(トニー・ウォルトン)にノミネートされ、バーグマンが受賞。イギリスのベテラン作曲家リチャード・ロドニー・ベネットによる音楽は、1930年代の雰囲気を見事に再現した華麗なピアノとオーケストラによるスタイリッシュな序曲が素晴らしい。列車がイスタンブールの駅を出発するシーン(The Orient Express)や、間奏曲(Entr'acte)でのワルツをベースとした音楽も極めて魅力的で、これはベネットのベストスコアの1つ。1936年生まれのベネットは、この作品以外にも「10億ドルの頭脳」(1967)「遥か群衆を離れて」(1967)「ニコライとアレクサンドラ」(1971)「レディ・カロライン」(1972)「(未公開/TV)ロジャー・ムーア/シャーロック・ホームズ・イン・ニューヨーク」(1976)「エクウス」(1977)「ヤンクス」(1979)「(未公開)戦場の罠」(1982)「魅せられて四月」(1992)「フォー・ウェディング」(1994)といった映画のスコアを手がけているが、中でも「ニコライとアレクサンドラ」と「レディ・カロライン」は非常に上質なシンフォニック・スコアで見事だった。オールスター・キャストによるクリスティ作品は、この後「ナイル殺人事件」「クリスタル殺人事件」「地中海殺人事件」「ドーバー海峡殺人事件」「死海殺人事件」と続くが、音楽としてはこの「オリエント急行殺人事件」とともに、「ナイル殺人事件」のニーノ・ロータによる絢爛豪華なスコアが秀逸だった。

= 2006年3月追加 =

2005年にパラマウント ホーム エンタテインメントジャパンがリリースしたこの映画のスペシャル・コレクターズ・エディションDVDには、特典として新たに製作されたメイキング映像が収録されており、作曲家のリチャード・ロドニー・ベネットへのインタビューを見ることが出来る。列車が疾走するシーンに優雅なワルツを付けた経緯等を語っており、実に興味深い。監督のシドニー・ルメットや、プロデューサー、出演者(マイケル・ヨーク、ジャクリーン・ビセット、ショーン・コネリー)、更にはアガサ・クリスティの孫へのインタビューも含まれており、非常によく出来たメイキングとなっている。クリスティの孫によると、彼女は映画の完成時も存命で、プレミア上映に出席し、映画の出来にも非常に満足していたという。監督のルメットが当初ポワロ役に考えていたのがアレック・ギネスとポール・スコフィールドというのも面白い。
またこのDVDには1980年11月2日にテレビ朝日「日曜洋画劇場」で放送された日本語吹替音声(欠落部分は追加で新録音)が収録されている。

吹替キャストは以下の通り(TV放映時声優/追加録声優)

アルバート・フィニー(田中明夫/塾 一久)
ローレン・バコール(楠 侑子/谷 育子)
マーティン・バルサム(富田耕生)
イングリッド・バーグマン(水城蘭子/園田恵子)
ジャクリーン・ビセット(鈴木弘子)
ジャン=ピエール・カッセル(小川真司)
ショーン・コネリー(近藤洋介)
ジョン・ギールガッド(塩見竜介)
ウェンディ・ヒラー(川路夏子)
アンソニー・パーキンス(西沢利明)
ヴァネッサ・レッドグレーブ(小沢佐生子)
レイチェル・ロバーツ(中西妙子)
リチャード・ウィドマーク(大塚周夫)
マイケル・ヨーク(納谷六朗)
ジョージ・クールーリス(松村彦次郎)
コリン・ブレイクリー(村越伊知郎)
デニス・クェリー(小林清志)
cover
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富田耕生、小川真司、近藤洋介、西沢利明、小林清志といったベテランが、追加部分を(なんと25年後に!)自ら録音していることに驚かされるが、故・田中明夫氏の追加部分は塾 一久氏の声質にあまりにも差がありすぎて違和感がある。

Richard Rodney Bennett

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ナポレオン Napoleon

作曲・指揮:カール・デイヴィス
Composed and Conducted by Carl Davis

演奏:レン管弦楽団
Performed by the Wren Orchestra of London

(英Silva Screen / FILMCD 149)

cover
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英雄ナポレオンの少年時代からイタリア遠征での勝利までを描いた、フランスのアベル・ガンス監督による1926年製作のサイレント映画。出演はアルベール・デュードネ、ジナ・マネス、アレクサンドル・クービッキー、アナベラ、シュザンヌ・ビアンケッティ、ダミア、アントナン・アルトー、ピエール・バチェフ他。「トリプル・エクラン」と呼ばれる3台の映写機を利用したシネマスコープ的上映方式による12時間に及ぶ超大作で、当時の音楽はアルトゥール・オネゲルが作曲した(このオネゲルのスコアも仏Eratoレーベルより新録音盤がリリースされている)。このサイレント映画をフィルム・ヒストリアンのケヴィン・ブラウンローが235分の短縮版に再構築したものを、フランシス・フォード・コッポラが1980年代に世界各地でリバイバル上映を行ったが(日本では1982年10月に公開)、この再公開時には、オーケストラの生演奏による伴奏が付けられていた。アメリカや日本で公開された際にはフランシス・コッポラの父カルミネ・コッポラ作曲による音楽が付けられていたが、ここで紹介しているカール・デイヴィスの音楽は、1982年12月にフランスのルアーブルで公開された時の伴奏用スコアである。ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」や、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」等を効果的に織込んだ重厚でクラシカルな音楽で、非常に格調高く、特にラスト近くのフル・オーケストラによる盛り上がりは凄まじい迫力。この「ナポレオン」に作曲したスコアがきっかけとなって、デイヴィスは「バクダッドの盗賊」(1924/1984)「イントレランス」(1916/1986)「ベン・ハー」(1925/1987)「黙示録の四騎士」(1921/1992)「オペラの怪人」(1925/1996)といったサイレント映画のリバイバル時のオリジナルスコアを多数手がけることになるが、これらのスコアは、いずれも極めてオーセンティックな響きをもった良質の劇音楽だった。この内、「イントレランス」はベルギーのPrometheusレーベルより、「ベン・ハー」「オペラの怪人」は英Silva Screenレーベルより作曲者自身の指揮によるCDがリリースされている他、Virginレーベルより下記の作品を収録した「The Silents」というコンピレーションCDがリリースされている。

「The Silents」
(Napoleon, The Crowd, Flesh and the Devil, Show People, Broken Blossoms, The Wind, The Thief of Bagdad, The Big Parade, Greed, Old Heidelberg)
  Carl Davis conducting The London Philharmonic Orchestra

Carl Davis

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1900年 Novecento

作曲・指揮:エンニオ・モリコーネ
Composed and Conducted by Ennio Morricone

(SLC / SLCD-1005)

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1976年製作のイタリア=フランス=ドイツ合作映画。20世紀前半のイタリアを舞台に二人の男の友情と葛藤を描いた、ベルナルド・ベルトルッチ監督による5時間以上(316分)に及ぶエピック・ドラマ。出演はロバート・デ・ニーロ、ジェラール・ドパルデュー、ドミニク・サンダ、ドナルド・サザーランド、アリダ・ヴァリ、バート・ランカスター、スターリング・ヘイドン、ステファニア・サンドレッリ、フランチェスカ・ベルティーニ、ラウラ・ベッティ他。製作はアルベルト・グリマルディ、脚本はフランコ・アルカッリ、ジュゼッペ・ベルトルッチと、監督のベルナルド・ベルトルッチが担当。撮影は名手ヴィットリオ・ストラーロ。1900年夏の同じ日に生まれた大地主の息子アルフレード(デ・ニーロ)と、小作人頭の息子オルモ(ドパルデュー)は、立場の違いを越えて友情を育むが、ファシズムの台頭に伴う混乱期の中で成長した二人は、やがて搾取する側とされる側とに分かれて対立することとなる。エンニオ・モリコーネの音楽は、冒頭の「Romanzo」で流れるどこか懐かしい響きをもった素朴で美しい第一主題が映画全体のトーンを決定付けており、この主題は途中「Padre e figlia」「Apertura della caccia」「Il quatro stato」「Primavera - 1945」といった曲に様々なバリエーションで繰り返し登場する。また「Estate - 1908」や最後の「Olmo e Alfredo」に現れる第二主題も、静かに美しく感動的。作曲家としてのモリコーネの優れた芸術性がベストの形で表現された、最上の映画音楽である。このCDは和田康宏氏によるSLCレーベルが1990年に復刻したもの。 後にイタリアのGDMレーベルよりもリリース済み。

Ennio Morricone

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ニュー・シネマ・パラダイス Nuovo cinema paradiso

作曲・指揮:エンニオ・モリコーネ
Composed and Conducted by Ennio Morricone

演奏:ウニオーネ・ムジチスティ・ディ・ローマ
Performed by Unione Musicisti di Roma

(伊Mercury / 836 810-2)

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当時29歳だったジュゼッペ・トルナトーレが監督・脚本を手がけた1989年製作のイタリア=フランス合作映画。出演はフィリップ・ノワレ、ジャック・ペラン、アニェーゼ・ナーノ、サルヴァトーレ・カシオ、マリオ・レオナルディ、レオポルド・トリエステ、ブリジット・フォッセー他。撮影はブラスコ・ジュラート。1989年度アカデミー賞の外国語映画賞、ゴールデン・グローブ外国映画賞、カンヌ国際映画祭の審査員特別賞(トルナトーレ)を受賞。シチリアの小さな村の映画館で映写技師として働くアルフレード(ノワレ)と、映画を愛する"トト"ことサルヴァトーレ少年(カシオ)の友情、そして青春時代のサルヴァトーレの恋が、映画にかかわる様々なエピソードとともに描かれる。ストーリーは、中年の映画監督となったサルヴァトーレ(ペラン)が、母親からアルフレードの訃報を伝えられて久しぶりに故郷に帰ってくるところから回想形式で語られ、ラストはサルヴァトーレがアルフレードの形見として受け取った映画フィルムを見る場面で終わる。このエンディングがこの上なく感動的。映画を愛する人でこのラストシーンに涙しない人はいまい。音楽はこの作品以降、「みんな元気」「明日を夢見て」「海の上のピアニスト」とトルナトーレ監督の全ての作品で組んでいるエンニオ・モリコーネ。これは映画自体が日本でもヒットしたため、モリコーネの映画音楽中でも最もポピュラーな作品の一つだろう。全体を通していくつかの印象的なテーマが交互に登場するが、まずピアノとオーケストラによるメインテーマ「Nuovo cinema paradiso」が、この作品の登場人物の「映画」に対する純粋な想いを見事に表現しており実に美しい。このテーマは「Dopo il crollo」「Visita al cinema」「Dal sex-appel Americano al primo Fellini」といった曲に様々な編曲により登場する。次に「Maturita」と「Infanzia e maturita」で紹介される、主人公サルヴァトーレの少年時代のアルフレードとの友情を表現したテーマと青年になったサルヴァトーレの恋心を表現したテーマが、何ともいえない甘酸っぱい雰囲気で素晴らしく、個人的にはこのテーマが最も気に入っている。これは「Prima gioventu」「Proiezione a due」「Toto e Alfredo」といった曲に登場する。更に、エンニオ・モリコーネの息子アンドレア・モリコーネが作曲した愛のテーマ「Tema d'amore」が、これまた非常に切なく美しい。このテーマは「Fuga, ricerca e ritorno」「Per Elena」にも登場するが、映画ではラストシーンにフル・オーケストラで流れ(Tema d'amore per nata)、感動を最高に盛り上げていた。アンドレア・モリコーネは1964年生まれで、映画音楽作曲家として既にいくつかの作品を手がけており、最近の「The Fourth King」では再度父のエンニオと一緒に仕事をしている。イタリアのGDMレベールより全23曲のExpanded盤がリリースされている。

Ennio Morricone

Andrea Morricone

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愛のメモリー Obsession

作曲・指揮:バーナード・ハーマン
Composed and Conducted by Bernard Herrmann

演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra

(カナダMFM / SRS 2004)

ブライアン・デ・パルマがヒッチコックの「めまい」を焼き直した1976年製作のサスペンス。出演はクリフ・ロバートソン、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド、ジョン・リスゴー、シルヴィア・キューンバ・ウィリアムス、ワンダ・ブラックマン他。脚本はデ・パルマとポール・シュレイダーが執筆。撮影はヴィルモス・ジグモンド。妻と幼い娘を誘拐された上に、警察が犯人を追跡中に事故で二人とも失なってしまった実業家(ロバートソン)が、16年後に妻とそっくりの女性に出会い恋に落ちる……。デ・パルマはヒッチコックの技巧面と「めまい」のプロットを模倣しているだけで、映画としては平凡な出来。これをハーマンの音楽なしに見たら極めて冗長に感じるだろう。ビュジョルドは童顔の美人女優だが、この映画の中でワンショットで成人の女性から少女に変貌したのには驚いた(特殊効果ではなく演技で!)。バーナード・ハーマンは1966年の「引き裂かれたカーテン」でヒッチコックとのコラボレーションを解消して以降、トリュフォー監督の「華氏451」「黒衣の花嫁」や、デ・パルマ監督の「悪魔のシスター」等に音楽を提供していたが、この「愛のメモリー」は晩年の傑作スコアである。全体を6曲の組曲に編成した極めて重厚でドラマティックな音楽で、神秘的なコーラスを加えたメインタイトルや、「The Ferry」「Court and La Salle's Struggle」等での激しいサスペンス音楽、そしてラストの空港での華麗なワルツによるフィナーレ(主人公たちの周りをカメラがぐるぐる廻るデ・パルマの演出はヒッチコックの安易な模倣でやはり感心しないが)等、ハーマンによるエモーショナルな劇音楽の集大成的なスコア。ハーマンは、この後にマーティン・スコセッシ監督の「タクシー・ドライバー」を手がけてこれが遺作となるが、この作品がいつもの彼のスタイルと少し異なるジャズをベースにしたスコアだったことを考えれば、この「愛のメモリー」の大編成オーケストラとコーラスの組合わせによるシンフォニック・スコアが、ハーマンのキャリアにおける真のフィナーレとも言える。ハーマンはこのスコアで1976年度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされた。このCDは、Varese Sarabandeに移る前にロバート・タウンソンがカナダのMasters Film Musicというレーベルでリリースしたもの。尚、このスコアには未発表曲を含んだComplete Scoreの海賊盤CDがある。

Music Box盤のレビュー

Bernard Herrmann

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黒の過程 L'Œuvre au noir

作曲・指揮:フレデリック・ドゥヴレーズ
Composed and Conducted by Frédéric Devreese

演奏:ベルギー国立管弦楽団
Performed by L'orchestre national de Belgique

(仏Barclay / 835 901-2)

1988年製作のフランス=ベルギー合作映画。マルグリット・ユルスナールの原作を基に、ベルギーのアンドレ・デルヴォーが監督・脚本を手がけた作品。出演はジャン・マリア・ヴォロンテ、アンナ・カリーナ、ジャック・リップ、マリー=クリスティーヌ・バロー他。撮影はシャルリー・ヴァン・ダム。16世紀のフランダースを舞台に、教会の教えに背き学問の探求をつづける錬金術士を描いたドラマ。異端の書を著したとして追放された錬金術士ゼノン(ヴォロンテ)が、故郷のブルージュに舞い戻って来るが、そこで彼は反逆者の青年を救ったことで怪しまれ、教会が仕掛けた罠にはまって捕らえられてしまう。宗教裁判で異端者として火刑に処せられることになったゼノンは、自らの命を絶つ。音楽はデルヴォー監督の諸作品を手がけているフレデリック・ドゥヴレーズが担当。全体を通して、主人公ゼノンの悪夢を描いた前衛的なタッチの重厚なシンフォニーで、冒頭の「La danse a l'auberge」という曲が非常にユニークでダイナミック。フレデリック・ドゥヴレーズは1929年オランダ生まれの作曲家で、映画音楽以外にオペラ、管弦楽曲、協奏曲、室内楽、バレエ音楽等を作曲している他、舞台やTVの音楽も手がけているベテラン。映画音楽としては、「(未公開)Benvenuta」(仏Milan)「(未公開)Les noces barbares」(仏Milan)「(未公開)Het sacrament」(ベルギー Indisc)「(未公開)La partie d'echecs」(仏Virgin)といった作品のサントラアルバムがリリースされているが、どのスコアも非常に独創的で優れたものである。また、この映画の監督のデルヴォーと組んだ作品を集めた自作自演の下記コンピレーションCDも出ている。

「Marco Polo Film Music Classics: Frédéric Devreese」
(独Marco Polo / 8.223681)
  Frédéric Devreese conducting BRT Philharmonic Orchestra (Brussels)
「(未公開)Benvenuta」「(未公開)イブ・モンタンの深夜列車 Un soir, un train...」「黒の過程 L'oeuvre au noir」「(未公開)Belle」

Frederic Devreese

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オーメン The Omen

作曲:ジェリー・ゴールドスミス
Composed by Jerry Goldsmith

指揮:ライオネル・ニューマン
Conducted by Lionel Newman

演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra

(米Varese Sarabande / VSD-5281)

cover
このCD(輸入盤 Deluxe Edition)を購入する

★TOWER.JPで購入(Varese Sarabande 40th Edition盤) 

ジェリー・ゴールドスミス1976年度アカデミー賞の作曲賞を受賞した作品。監督は「スーパーマン」や「リーサル・ウェポン」シリーズのリチャード・ドナー。出演はグレゴリー・ペック、リー・レミック、デヴィッド・ワーナー、レオ・マッカーン、ハーヴェイ・スティーヴンス、ビリー・ホワイトロー、ホリー・パランス他。脚本はデヴィッド・セルツァー、撮影はギルバート・テイラーが担当。製作総指揮はメイス・ニューフェルド。ペックとレミック扮するアメリカ大使夫妻の子供が死産したことから、同じ病院で生まれた別の子供を引き取って育てることにするが、その子ダミアンは6月6日6時に生まれた悪魔の子だった。ダミアンの正体を暴こうとする者たちが壮絶な死に様で次々と消えていくが、中でもデヴィッド・ワーナー扮する写真家がトラックの荷台に積まれた大きなガラスで首を切断されるシーンは、特殊効果の出来はあまり良くないもののハイスピード撮影と巧みなカット割で迫力あり。ドナーの職人的な演出と出演者の好演でなかなか風格のあるホラー映画に仕上がっているが、何といってもゴールドスミスの音楽が強烈に怖い。コーラスを効果的に使った不気味な悪魔音楽は、この作品以降のホラー映画で様々な作曲家によって何度も模倣されており、メインテーマの「Ave Satani」は今やクラシックとも言える。「Killer's Storm」「The Demise of Mrs.Baylock」「The Fall」「Safari Park」「The Dog's Attack」「The Altar」等、殺人シーンや悪魔の襲来を想起するシーンでのゴールドスミスのスコアは、そのシーンの恐怖を倍増させるほどの効果を持っている。ホラーのジャンルでの映画音楽における1つのマイルストーンだと思う。このアルバムにはゴールドスミス作曲/キャロル・ヘザー作詞・歌による主題歌「The Piper Dreams」も収録されているが、この曲のみ奇妙に明るい。この映画の興行的な成功で、その後「オーメン2/ダミアン(Damien Omen II)」(1978)「オーメン/最後の闘争(The Final Conflict)」(1981)「オーメン4(Omen IV: The Awakening)」(1991)とシリーズ化されたが、2作目と3作目はやはりゴールドスミスがスコアを作曲しており、「オーメン2/ダミアン」ではより恐怖色を強化したダイナミックなホラー音楽、「オーメン/最後の闘争」ではより崇高で格調の高いホラー音楽と、回を重ねるごとに更に優れたスコアにレベルアップしていくのはさすがである。4作目の「オーメン4」は、「哀しみのラストダンス」等のジョナサン・シェーファーがスコアを担当しており、良い作曲家なのだが、ゴールドスミスの強力な3部作の後ではいかにも分が悪く、あまり印象に残っていない。

Jerry Goldsmith

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女王陛下の007 On Her Majesty's Secret Service

作曲・指揮:ジョン・バリー
Composed and Conducted by John Barry

(米EMI / CDP 7 90618 2)

cover
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★TOWER.JPで購入 

イアン・フレミング原作の007シリーズ第6作。1969年製作で、監督はピーター・R・ハント。ジョージ・レーゼンビーがショーン・コネリーに次ぐ二代目ジェームズ・ボンドに抜擢された作品。共演はダイアナ・リグ(TVの「おしゃれ(秘)探偵」のエマ・ピール役で知られる)、テリー・サヴァラス、ガブリエル・フェルゼッティ、バーナード・リー、ロイス・マクスウェル、ベッシー・ラヴ、ジョアンナ・ラムレイ、カトリーヌ・シェル他。製作はハリー・サルツマンとアルバート・R・ブロッコリ。脚本はウォルフ・マンキウィッツ、リチャード・メイボーム、サイモン・レイヴンの共作。撮影はマイケル・リードとエグリ・ウォックスホルトが担当。細菌を使った人類抹殺計画を企てるスペクターの首領エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド(サヴァラス)を倒すため、スイスへと飛ぶボンド。雪山でのスキー・チェイスや、猛スピードで滑走するボブスレー上での格闘等、アクションシーンの迫力がシリーズ中でも際立った作品。レーゼンビーはこれが唯一のボンド役で、アクションの身のこなしは良いが、いかんせん演技が平坦で、コネリーや三代目のロジャー・ムーアと比べるとどうしても印象が薄い。その後、人気TVシリーズの「0011 ナポレオン・ソロ」をロバート・ヴォーン、デヴィッド・マッカラム主演で15年ぶりに新たに映画化した「(未公開)0011 ナポレオン・ソロ 2 Return of the Man from U.N.C.L.E.」('83)にカメオ出演していたが、これが結構笑える。ヴォーン扮するナポレオン・ソロがラス・ヴェガスで敵の車に追われているところに偶々出くわしたレーゼンビーが、愛車アストンマーティンに装備した秘密兵器を駆使してアッという間に追手をやっつけてしまうという愉快なシーンで、アストンマーティンのナンバープレートが「J.B.」になっていたりする。この「女王陛下の007」の音楽は、007シリーズの大半のスコアを手がけているジョン・バリーで、個人的には彼の007スコア中でもこの作品が最も気に入っている。何といっても、メインタイトルに流れる「Main Theme - On Her Majesty's Secret Service」が抜群にかっこいい。ここで登場するいかにもバリーらしいダークなタッチの主題は途中の「Ski Chase」「Battle at Piz Gloria」といったアクションスコアでも繰り返し現れる。有名なジェームズ・ボンドのテーマと組み合わせた「This Never Happened to the Other Feller」も良い。主題歌「We Have All the Time in the World」は作曲がバリー、作詞がハル・デヴィッドで、ルイ・アームストロングが歌っている。(バリー作曲ではないが、007シリーズの主題歌では「私を愛したスパイ」の「Nobody Does It Better」が個人的な好みである)

「Remastered and Expanded」盤のレビュー(2003年3月追加)

John Barry

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子熊物語 L'ours

作曲:フィリップ・サルド
Composed by Philippe Sarde

指揮:カルロ・サヴィーナ
Conducted by Carlo Savina

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra

(仏Ariola / 259 446)

1988年製作のフランス映画。1917年に書かれたジェームズ・オリヴァー・カーウッドの小説「The Grizzly King」を基に、「人類創世」(1981)「薔薇の名前」(1986)「セブン・イヤーズ・イン・チベット」(1997)「スターリングラード」(2000)等で知られるフランスのジャン=ジャック・アノー監督(1943〜)が撮った大自然ドラマ。脚本は「反撥」(1964)「吸血鬼」(1967)「テス」(1979)「フランティック」(1988)等のジェラール・ブラッシュ、撮影は「戦場の小さな天使たち」(1987)「危険な関係」(1988)「チャーリーとチョコレート工場」(2005)「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」(2016)等のフィリップ・ルースロが担当。19世紀後半のブリティッシュコロンビア(カナダ)を舞台に、母親をなくした子熊とハンターに傷つけられた手負いの雄熊の交流を描く物語で、BartとDouceと呼ばれる本物の2頭の熊が主役。共演はチェッキー・カリョ、ジャック・ウォーリス、アンドレ・ラコーム他。アノー監督は、6年の歳月をかけて熊の表情を根気よく撮影し、この映画を仕上げたという。着ぐるみやCGを安易に使わず、本物で通したところがこの監督のこだわりなのだろう。セザール賞の監督賞、編集賞を受賞し、1989年度アカデミー賞の編集賞にノミネートされた。音楽は「人類創世」でもアノー監督と組んだフィリップ・サルド。このCDは、スコア全体を20分55秒と24分27秒の2曲の組曲にまとめた構成となっているが、冒頭から悲哀感を帯びた極めて情感豊かなフルオーケストラによるドラマティックスコアを展開している(監督の希望によりチャイコフスキー作曲のピアノ曲『四季』作品37bの「6月 舟歌」の主題をアレンジ)。繊細で小じんまりとしたIntimateな作品の多いサルドとしては、非常にスケールの大きいストレートな作風の堂々とした音楽で、聴き応えがある。アノー監督と組んだ前作の「人類創世(La guerre du feu)」(1981)では、ロンドン交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、アンブロージアン合唱団、ストラスブール・パーカッションズを動員した壮大なスペクタクル音楽を聴かせたが、この「子熊物語」のスコアはその延長線上にあり、より叙情味豊かな美しい音楽。

= 2018年8月追加 =

仏Music Box Recordsより、このスコアの30周年記念盤としてサルド自身が監修した全21曲/約66分収録のリマスター盤がリリースされている。ボーナストラックには、キース・ハーヴェイ(チェロ)、マイケル・デイヴィス(ヴァイオリン)、ジョン・ウィリアムス(ギター)、ヒューバート・ロウズ(フルート)といった著名なソロイストによるメインの主題の演奏も収録。500枚限定プレス。収録曲は以下の通り。

(仏Music Box Records / MBR-136)

1. Pastorale (04:46)
2. Liberté (01:43)
3. Festin interrompu (01:51)
4. Apprentissage de la solitude (02:09)
5. La menace (01:27)
6. L'amitié (02:13)
7. Hallucinations (01:59)
8. Funestes présages (05:33)
9. La fuite (02:01)
10. Veillée et aube (04:27)
11. La traque (04:03)
12. Orphelin (03:16)
13. La meute (02:50)
14. Épilogue (03:26)
15. Générique fin (03:32)

BONUS TRACKS
16. Variation 1 (Dolce) (01:47)
17. Variation 2 (Giocoso) (03:20)
18. Variation 3 (Con malinconia) (03:54)
19. Thème (04:22)
20. Variation 4 (Con spirito) (02:53)
21. Variation 5 (Doloroso) (03:42)

Total Time 66:10

★TOWER.JPで購入

Philippe Sarde

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アウトロー The Outlaw Josey Wales

作曲・指揮:ジェリー・フィールディング
Composed and Conducted by Jerry Fielding

(米Screen Archives Entertainment / JFC-1)

アメリカ建国200年を記念して1976年に製作された、クリント・イーストウッド監督・主演によるウェスタン。共演は、チーフ・ダン・ジョージ、ソンドラ・ロック、ビル・マッキーニー、ジョン・ヴァーノン、ポーラ・トルーマン、サム・ボトムズ、ジョン・デイヴィス・チャンドラー、ジェラルディン・キームズ、ローヤル・ダーノ、マット・クラーク、ウィル・サンプソン他。フォレスト・カーターの原作を基に、「ライト・スタッフ」「ライジング・サン」等の監督フィリップ・カウフマン(元々この映画も監督するはずだった)と、ソニア・チャーナスが脚本を担当。撮影はイーストウッドやドン・シーゲル監督とのコラボレーションが多い名手ブルース・サーティース。南北戦争中の西部で農場を営むジョゼィ・ウェルズ(イーストウッド)が、北軍兵士の無法者集団に妻子を虐殺され自らも瀕死の重傷を負わされたことから復讐の鬼と化し、訓練を積んで射撃の名手となる。彼は南軍のフレッチャー(ヴァーノン)に協力し、無法者集団を追跡するが、やがて自分もお尋ね者として追われるようになる。音楽を担当したジェリー・フィールディングは、「ワイルドバンチ」「わらの犬」等、サム・ペキンパー監督とのコラボレーションで有名だが、1976年にペキンパーがドイツのプロデューサーの下で監督した「戦争のはらわた」で、彼がアメリカ人であるとの単純な理由から作曲家として起用されなかったことをきっかけに、それ以降はコンビを解消している(この映画の音楽はオーストリア人のアーネスト・ゴールドが担当)。この「アウトロー」の音楽は、「ワイルド・バンチ」や「追跡者」といった彼の傑作ウェスタン・スコアと同様、激しい「怒り」のこめられたダイナミックでパワフルなドラマティック・スコアで、南北戦争時のマーチを取り入れたミリタリー調のメインテーマも印象的。「ワイルバンチ」や「チャトズ・ランド」でも効果的だった力強いパーカッションが、ドラマの緊張感を高めている。「The Initial Outrage」「Big Town Shoot Up 〜 Escape From Town」「The Final Revenge」といった暴力的でシャープなアクション・スコアや、ロデオ風のアレンジによる「Into Town」等、随所にこの作曲家らしいタッチが見られる。エンディングでの、美しく静かなフレーズからメインテーマのマーチへと展開する「The War's Over」も名曲。フィールディングは、この「アウトロー」のスコアで1976年度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされた。イーストウッドとは、この作品以降「ダーティ・ハリー3」(1976)「ガントレット」(1977)「アルカトラズからの脱出」(1979)の3作品(主演映画)で組んでいる。このスコアのサントラは、かつてWarner BrothersレーベルからLP盤がリリースされていたが、このCDは「The Jerry Fielding Collection」というプライヴェート・レーベルのシリーズの1つで、「フィールディングの功績を保存することを目的として彼の家族や親しい友人たちの個人的な用途のために制作されたもの」との注意書きがある(なのに一般にも売られている)。映画に使用されたなった曲を含む全38曲の完全盤。同じシリーズで「ワイルド・バンチ」と「キラー・エリート」が出ている。

Jerry Fielding

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(未公開)パッセージ・死の脱走山脈 The Passage

作曲・指揮:マイケル・J・ルイス
Composed and Conducted by Michael J. Lewis

(Promotional盤)

1978年製作のイギリス映画。監督は、「恐怖の砂」(1958)「北西戦線」(1959)「ナバロンの要塞」(1961)「恐怖の岬」(1962)「隊長ブーリバ」(1962)「0の決死圏」(1969)「マッケンナの黄金」(1969)等、冒険活劇やサスペンス映画を得意とするイギリスのベテラン、J・リー・トンプソン。出演はアンソニー・クイン、ジェームズ・メイソン、マルコム・マクダウェル、クリストファー・リー、パトリシア・ニール、ケイ・レンツ、ポール・クレメンズ、ミシェル・ロンズデール、マルセル・ボズッフィ他。原作・脚本はブルース・ニコライセン、撮影はマイケル・リード。第二次大戦中に、ナチス・ドイツに追われる化学者(メイソン)とその家族を、ピレネー山脈を越えて逃がすために雇われたバスク人のガイド(クイン)を描くアクション・ドラマ。主人公たちを執拗に追跡するドイツ軍将校をマルコム・マクダウェルが怪演。メイソンの妻にミステリ作家ロアルド・ダールの妻、パトリシア・ニールが扮する。映画自体は、ソリッドなキャストと、「ナバロンの要塞」のトンプソン監督の演出にしては凡庸な出来だった。この映画の中で、ジプシーに扮したクリストファー・リーがドイツ軍に捕えられ、ガソリンを頭からかけられて焼き殺されるシーンがあるが、これはリーが戦時中に実際に目撃したことを監督に提案し、それが採用されたものらしい(おかげでリーは寒い日に何度もガソリンに見せかけた水をぶっかけられて凍え死にそうになったというが、自分で提案したので自業自得だったと言っている)。マイケル・J・ルイスのスコアは、雪山をバックにしたメインタイトルに流れる「Into Action」が、アドヴェンチャー・スピリットに溢れた豪快なマーチで素晴らしい。後半の「Pursuit」「Battle Sequence」「Anguish」「Chase」と連続するアクション・スコアも、いかにもルイスらしい抜群の切れ味の良さ。ドラマティックな第二主題「Apassionata」も美しい。「北海ハイジャック」と並ぶ、ルイスの冒険活劇スコアの傑作。このプロモーショナル盤CDは、白地に黒文字でタイトルや曲目が印刷されただけの実にそっけないデザインで、例によって中身とのギャップが激しい。

Michael J. Lewis

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猿の惑星 Planet of the Apes

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by Jerry Goldsmith

(米Intrada / FMT 8006D)

cover
このCD(Varese盤)を購入する

★TOWER.JPで購入(Rambling Records国内盤)

★TOWER.JPで購入(Varese Sarabande盤) 

1968年製作のSF映画の名作(同年に「2001年宇宙の旅」が製作されているが、公開当時はより明快な娯楽作品として「猿の惑星」の方が評価が高かった)。「戦場にかける橋」等のピエール・ブールの原作小説を、TVの「ミステリーゾーン」や「四次元への招待」のクリエーターとして有名なロッド・サーリングとマイケル・ウィルソンが脚色し、「パピヨン」「パットン大戦車軍団」等の名匠フランクリン・J・シャフナーが監督した傑作。出演はチャールトン・ヘストン、キム・ハンター、ロディ・マクドウォール、リンダ・ハリソン、モーリス・エヴァンス、ジェームズ・ホイットモア、ジェームズ・デイリー、ロバート・ガナー、ルー・ワグナー他。撮影はレオン・シャムロイ、特殊効果はL・B・アボット、猿の特殊メイクはジョン・チェンバースが担当(彼はこの特殊メイクで1968年度アカデミー賞の名誉賞を受賞)。人工冬眠により地球を遠く離れて旅する宇宙飛行士たちの乗った宇宙船が未知の惑星に不時着するが、そこは猿が支配し人間が奴隷となっている世界だった、という設定。主人公のテイラー(ヘストン)率いる3人の宇宙飛行士たちが、惑星を探索する内に、徐々にその世界の実態が明らかになって行く過程の演出が実にスリリング。ラストのアイロニカルなオチはいかにもロッド・サーリングらしい(この有名なオチはピエール・ブールの原作にはない)。この映画は大ヒットとなり、4本の続編映画と、実写とアニメによる2本のTVシリーズが製作されたが、2作目以降が凡庸な出来だった為シリーズとしての評価は高くない。ただこの1作目だけは、シャフナー監督らしいセンス・オブ・ワンダーに溢れた上質の娯楽作品となっている。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、前衛音楽的なアプローチにより不安定な作品世界を表現した傑作で、電子楽器を一切使用せず、アコースティックな楽器の特殊な演奏方法等によりユニークなサウンドを再現している。「The Revelation」「The Clothes Snatchers」「No Escape」等、逆さまにしたステンレス製ボウルを含む様々なパーカッション群を駆使した、ダイナミックなアクション・スコアが秀逸。ゴールドスミスはこのスコアで1968年度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされた。このスコアのサントラは、かつてProject 3というレーベルからLPとCDがリリースされていたが、1992年にIntradaレーベルが出したこのCDは、オリジナルのセッションテープから新たにリミックスしており、メインタイトルでのエコープレックスを使った弦楽器のピッチカート等バックグラウンドの音が非常に鮮明になっている。更に、過去のProject 3のアルバムに未収録だった「The Hunt」という曲を含んでいるが、これは主人公たちが馬に跨った猿の軍団に襲撃されるシーンのサスペンスフルな音楽で、特に、画面に初めて猿が登場する瞬間のラム・ホーンによる耳をつんざくような咆哮が鮮烈な印象を残す。尚、1997年にVarese SarabandeレーベルがリリースしたCDは、未発表曲を更に追加した完全盤で、同じゴールドスミス作曲による「新・猿の惑星」の組曲がカップリングされている(米Varese Sarabande / VSD-5848)。因みに、2作目以降の監督と作曲家は以下の通り。

「猿の惑星」シリーズの音楽

Jerry Goldsmith

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プロビデンス Providence

作曲・指揮:ミクロス・ローザ
Composed and Conducted by Miklos Rozsa

(米DRG / CDSL 9502)

cover
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★TOWER.JPで購入(Digitmovies盤) 

「夜と霧」(1955)「二十四時間の情事」(1959)「去年マリエンバートで」(1960)「薔薇のスタビスキー」(1973) 等で知られるフランスのアラン・レネ監督が、1977年に撮ったイギリス=フランス=スイス合作映画。出演はダーク・ボガード、ジョン・ギールガッド、エレン・バースティン、デヴィッド・ワーナー、エレイン・ストリッチ他。脚本はデヴィッド・マーサー、撮影はリカルド・アロノヴィッチが担当。ギールガッド扮する老作家が、彼の遺作となるであろう小説の構想を練る過程で、現実と虚構の錯綜する様々な物語が展開していくという難解なドラマ。この映画の音楽は、ハリウッド黄金時代の大作曲家ミクロス・ローザが晩年に手がけた傑作で、彼らしい重厚かつ複雑で緻密なスコアとなっている。フルオーケストラによるメインテーマ「Providence」がアルバム中のハイライトであり、極めてドラマティックで力強いタッチでありながら、その響きはどこまでも流麗かつ滑らかで、まさに孤高の名曲。同じ主題をピアノで演奏した、ゆったりとしたテンポのワルツ「Twilight Walz」も美しく、この曲はローザがヒッチコック監督の「白い恐怖」のために書いた「Spellbound Concerto」というピアノ協奏曲(私の大好きな曲)を想わせる。ローザというと、「ベン・ハー」に代表されるスケールの大きい歴史劇スペクタクルでの重厚なシンフォニック・スコアが有名だが、一方で、画家ヴァン・ゴッホの生涯を描いたヴィンセント・ミネリ監督の「炎の人ゴッホ」や、ビリー・ワイルダー監督の「失われた週末」等の心理ドラマにも、繊細で深みのある優れたスコアを書いており、この「プロビデンス」もそういったジャンルにおける傑作の1つである。ローザはこの作品以降、ニコラス・メイヤー監督の「タイム・アフター・タイム(Time After Time)」(1979)、ビリー・ワイルダー監督の「悲愁(Fedora)」(1979)、リチャード・マーカンド監督の「針の眼(Eye of the Needle)」(1981)、カール・ライナー監督の「(未公開)スティーブ・マーティンの四つ数えろ(Dead Men Don't Wear Plaid)」(1982)といった作品のスコアを手がけており、映画自体の出来にはムラがあるが、彼の音楽は常に上質で格調高く、最後まで巨匠の名に恥じない素晴らしいスコアを提供し続けた。

Miklos Rozsa

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レイダース 失われたアーク《聖櫃》 Raiders of the Lost Ark

作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by John Williams

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra

(米DCC / DZS-090)

cover
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★TOWER.JPで購入(Concord盤)

★TOWER.JPで購入(Concord LP盤) 

スティーヴン・スピルバーグ(監督)とジョージ・ルーカス(製作総指揮)が初めて手を組んだノンストップ・アドヴェンチャー(1981年製作)。ハリソン・フォード扮する考古学者インディアナ・ジョーンズが、超自然的な力を持つ十戒の破片を納めた聖櫃をめぐって、ナチスドイツと虚々実々の追撃戦を繰り広げる。共演はカレン・アレン、ウォルフ・カーラー、ポール・フリーマン、ロナルド・レイシー、ジョン・リス=デイヴィス、デンホルム・エリオット、アンソニー・ヒギンズ、アルフレッド・モリーナ他。原案はルーカスと、「ライト・スタッフ」「ライジング・サン」等のフィリップ・カウフマン。脚本は、「白いドレスの女」「シルバラード」「ワイアット・アープ」「フレンチ・キス」等のローレンス・カスダン。撮影はダグラス・スローカム、SFXはリチャード・エドランド率いるILMが担当。スピルバーグとルーカスの元々の狙いは「007シリーズのようなグローバルな冒険アクション」であり、3作目の「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」(1989)に、インディの父親役でショーン・コネリーが登場するのは偶然ではないだろう。1981年度アカデミー賞の作品賞、監督賞、撮影賞、作曲賞にノミネートされ、美術監督・装置賞、視覚効果賞、音響賞、編集賞、特別業績賞(音響効果編集)を受賞。音楽は、「続・激突!カージャック」以来スピルバーグ監督作品の大半を担当し、ルーカスの「スター・ウォーズ」シリーズも担当しているジョン・ウィリアムス。かつてのコルンゴルトやマックス・スタイナーの冒険活劇音楽にも通ずるロマンティシズムとダイナミズムに満ちた豪快なスコアで、ウィリアムスのベスト作の1つ。勇壮な「レイダース・マーチ」は今やクラシックと言える名曲。個人的な好みは、「地図の部屋」でインディが聖櫃の隠された場所を探し当てるシーン(「The Map Room: Dawn」)と、インディがナチスのトラックから聖櫃を奪還するシーン(「Desert Chase」)の音楽で、映像との組合わせにより強烈な映画的興奮を覚える。このCDは、1995年にDCCレーベル(ニック・レッドマンがプロデュース)からリリースされた30分以上の未発表曲を含む完全盤(合計約74分)で、冒頭のジャングルのシーン(「Main Title: South America, 1936」)、飛行場でのインディとドイツ兵のフィストファイトシーン(「Airplane Fight」)、砂漠の追跡シーンの別バージョン(「Desert Chase」)といった、オリジナルのLP/CDには含まれていなかった曲が聴ける貴重なアルバム。

John Williams

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オスロ国際空港/ダブル・ハイジャック Ransom

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by Jerry Goldsmith

演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra

(英Silva Screen / FILMCD 081)

 ★TOWER.JPで購入(Prometheus盤)

1974年製作のイギリス映画(アメリカでの公開題名は「The Terrorists」)。監督は、フィンランド出身で「イワン・デニーソヴィチの一日」(1971)等のキャスパー・リード。出演はショーン・コネリー、イアン・マクシェーン、ジェフリー・ウィッカム、ノーマン・ブリスト、イザベル・ディーン、ジョン・クウェンティン他。脚本はポール・ホイーラー。撮影はイングマール・ベルイマン監督作品で知られるスヴェン・ニクヴィスト。ノルウェーのオスロ国際空港に着陸寸前の旅客機をハイジャックしたレイ・ペトリ(マクシェーン)率いる3人のテロリストたちと、テロ対策部隊長のニルス・タールヴィック大佐(コネリー)の対決を描くサスペンス。コネリーの存在感と、名手ニクヴィストの映像が見所だが、監督がこの手のジャンルに慣れていなかったせいか凡庸な出来の映画。ストーリーの設定は良いので、もっと巧い職人監督に撮らせれば面白い作品になっただろう。映画は駄作でも、ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、サスペンスアクションのジャンルにおける彼のベストスコアの1つ。剃刀の刃のような鋭い緊迫感に満ちた、エモーショナルなオーケストラ・サウンドが素晴らしい。華麗でドラマティックなメインテーマを組込んだサスペンス音楽「Sky Chaser」が全体の白眉だが、ストイックなタッチの「End Title」も秀逸。曲の締めくくりのかっこ良さはゴールドスミスならでは。このスコアは当時イギリスのDartというレーベルから極めて入手困難なサントラLPが出ていたが、マイナーなレーベルのせいか非常に盤質が悪かった(フランス盤LPもあったがやはり入手困難)。このSilva ScreenレーベルのCD(1991年)は、その意味で画期的なリリースだが、ライナーノーツによると、オリジナルのマスターテープが紛失していたため、オーディオカセットとLP盤の一部を音源にしてCD化したらしい(よって音質はあまり良くなく、曲によってバラつきがある)。尚、このCDは同じゴールドスミス作曲の「0の決死圏(The Chairman)」のスコアとのカップリングになっている(こちらもTetragrammatonというマイナーなレーベルから入手困難なサントラLPが出ていた)。

Jerry Goldsmith

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若き勇者たち Red Dawn

作曲・指揮:ベーシル・ポールドゥーリス
Composed and Conducted by Basil Poledouris

(米Intrada / RVF 6001D)

 ★TOWER.JPで購入(Intrada Expanded盤)

タカ派で知られるジョン・ミリアス監督が若手人気俳優を多数起用して1984年に撮ったアクション映画。出演はパトリック・スウェイジ、C・トーマス・ハウエル、リー・トンプソン、チャーリー・シーン、ジェニファー・グレイ、パワーズ・ブース、ベン・ジョンソン、ハリー・ディーン・スタントン、ロン・オニール、ウィリアム・スミス他。原案は「ロビン・フッド」「ウォーター・ワールド」等のケヴィン・レイノルズで、脚本はレイノルズとミリアスの共作。製作総指揮はシドニー・ベッカーマン、撮影はリック・ウェイトが担当。旧ソ連軍が突然アメリカに侵攻し、小さな町のティーンズが銃を手に敵と戦うという設定で、いかにもミリアスらしい題材だが、映画としてはあまり成功していない。音楽は、「ビッグ・ウェンズデー」(1978)「コナン・ザ・グレート」(1982)「戦場」(1989)「イントルーダー/怒りの翼」(1990)等でもミリアス監督と組んでいるベーシル・ポールドゥーリスで、彼らは南カリフォルニア大学の映画学科の学生時代からの親友。シンセサイザーとオーケストラの組合わせによる、緊張感に満ちたサスペンス・アクション音楽で、ポールドゥーリスの持ち味である好戦的でペイトリオティックなタッチが随所に見られる。勇壮な「Main Title」「End Title」のマーチや、「The Invasion」「Wolverines」「Robert's End」でのハイテンションなアクション・スコアが秀逸。ポールドゥーリスはミリアスとのコンビの他に、ポール・ヴァーホーヴェン監督と組んだ「(未公開)炎のグレートコマンド・地獄城の大冒険 Flesh + Blood」(1985)「ロボコップ」(1987)「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997)や、「青い珊瑚礁」(1980)「(未公開)チェリー2000」(1986)「(TV)ロンサム・ダブ」(1989)「レッド・オクトーバーを追え!」(1990)「フリー・ウィリー」(1993)「ホット・ショット2」(1993)「シリアル・ママ」(1994)「ジャングル・ブック」(1994)「沈黙の要塞」(1994)「(TV)名犬ラッシー」(1994)「暴走特急」(1995)「ブレーキ・ダウン」(1997)「レ・ミゼラブル」(1998)等のスコアを手がけている。この「若き勇者たち」は初期の傑作スコアだが、同じミリアスとのコンビ作である「コナン・ザ・グレート」のバーバリックなスコアや、「戦場」の情感豊かでヒロイックなスコアも素晴らしい。「若き勇者たち」のサントラ盤は、ダグラス・フェイクがIntradaレーベルを立ち上げた時に最初にリリースしたアルバムで、かなり高額のプレミアムがついた限定盤LPとして発売されていた。

Basil Poledouris

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(未公開)新・三銃士/華麗なる勇者の冒険 Le retour des Mousquetaires

作曲・指揮:ジャン=クロード・プティ
Composed and Conducted by Jean-Claude Petit

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra

(仏Milan / CD CH 383)

1989年製作のイギリス=フランス=スペイン合作映画。アレクサンドル・デュマの有名な小説をリチャード・レスター監督がオールスター・キャストで映画化した「三銃士」(音楽はミシェル・ルグラン)、「四銃士」(音楽はラロ・シフリン)から15年を経て、同じ監督・主要キャストで製作された3作目。出演は、マイケル・ヨーク、オリヴァー・リード、フランク・フィンレイ、リチャード・チェンバレン、C・トーマス・ハウエル、キム・キャットラル、フィリップ・ノワレ、ロイ・キニア(この映画の撮影中に事故死)、ジェラルディン・チャップリン、クリストファー・リー、ジャン=ピエール・カッセル、ユーセビオ・ラザロ、ビル・コノリー他。製作はピエール・スペングラー、脚本はジョージ・マクドナルド・フレイザー(デュマの原作「Twenty Years Later」を基にしている)、撮影はベルナール・リュティックが担当。ミレディ・ド・ウィンターの死後、20年ぶりに再会した銃士たち(ヨーク、リード、フィンレイ、チェンバレン)がマザラン枢機卿(ノワレ)とミレディの娘の策略からアン女王を救おうとする。映画自体の出来は前2作に及ばず、アメリカでは劇場公開もなく1991年にCATVで初放映された。音楽のジャン=クロード・プティは、繊細でドラマティックなスコアを得意とするフランスのベテランで、ここでは、ロンドン交響楽団とAcademy of Ancient Musicの演奏による華麗なアドヴェンチャー・スコアを展開している。不吉なタッチのイントロから、一転して宮廷音楽風の優雅なパッセージとなり、フルオーケストラによる豪快なメインテーマへと発展する「Opening」、明るく快活なマーチ風の「Athos and Son」「Beaufort's Escape」、ダイナミックなアクション・スコア「Musketeers Fight Justine」「Justine's Lair」「Ship Fight」「Justine's Last Land」、栄光に満ちた「King Returns」「Twenty Years Later」と、シンフォニックなドラマティック・スコアの醍醐味が満喫できる傑作。特に最後の「Twenty Years Later」で、いかにもハッピー・エンディングなオーケストラの盛り上がりからフルパワーでメインテーマへとなだれ込む部分が最高にかっこいい。プティのベストスコアの1つ。彼はこの作品以外に、「(未公開)L'addition」(仏Carrere)「(未公開)Le caviar rouge」(仏Philips)「(未公開)Tranches de vie」(仏Carrere)「美しさと哀しみと(Tristesse et beaute)」(仏Carrere)「ペテン師アカデミー ずっこけ珍道中(Vent de panique)」(仏Milan、以上LPのみ)「ふたり(Deux)」(仏Milan)「(未公開)L'ile」(仏Milan)「愛と宿命の泉(Jean de Florette)」(仏Milan)「シラノ・ド・ベルジュラック(Cyrano de Bergerac)」(仏Trema)「妻への恋文(Le zebre)」(仏Virgin)「プロヴァンスの恋(Le hussard sur le toit)」(仏Travelling)「ボーマルシェ フィガロの誕生(Beaumarchais l'insolent)」(仏Erato)といったサントラ・アルバムがリリースされているが、どのスコアも非常に上質で美しい。ドルリュー、サルドに続くフランスの正統派フィルム・コンポーザーの1人。

Jean-Claude Petit

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スコルピオ Scorpio

作曲・指揮:ジェリー・フィールディング
Composed and Conducted by Jerry Fielding

(米Bay Cities / BCD-LE 4003)

イギリスの職人監督マイケル・ウイナーが1973年に撮ったスパイ・スリラー。出演は、バート・ランカスター、アラン・ドロン、ポール・スコフィールド、ゲイル・ハニカット、ジョン・コリコス、J・D・キャノン、ヴラデク・シェイバル、ジョアンヌ・リンヴィル他。製作はウォルター・ミリッシュ、脚本はジェラルド・ウィルソンとデヴィッド・リンテルズ、撮影はロバート・ペインターが担当。CIAエージェントのクロス(ランカスター)は、殺し屋のローリエ(ドロン)と某国首相暗殺の任務を遂行するが、クロスには二重スパイの嫌疑がかけられており、ローリエはクロスを抹殺せよとの指令を受ける。映画はワシントン D.C.、ロンドン、パリ、ウィーンといった各国の都市で展開するが、ジェリー・フィールディングのスコアは情感豊かなオーケストラ・サウンドによってヨーロッパの舞台背景を描写すると同時に、シャープでサスペンスフルなジャズによってアクション・シーンを盛り上げている。冒頭の「The Parisian Connection」は、とてもアメリカ人の作曲家が書いたとは思えないほどヨーロッパ的なタッチのドラマティックで美しい曲。「The Inperial Vaults」ではオーストリアの有名なワルツ「Die Flendermaus」を効果的に採り入れている。しかし、フィールディングの持ち味が最も強く現われているのは、「A Wag of a Tail」「A Russian Wags His Tail」「Hide and Seek」といったアクション・スコアでのクールなジャズであり、特に「Hide and Seek」はスペクタキュラーでダイナミックなサウンドが迫力満点。フィールディングはこの作品以外に「追跡者」(1970)「チャトズ・ランド」(1971)「妖精たちの森」(1972)「メカニック」(1972)「大いなる眠り」(1978)でもマイケル・ウィナー監督と組んでいるが、ジャズをベースとしたサスペンスアクション・スコアとしては、この「スコルピオ」と並んで「大いなる眠り」が秀逸。尚、このBay CitiesレーベルのCDにはフィールディング作曲の「ジョニーは戦場へ行った」(1971)の組曲(13:39)と「(未公開)A War of Children」(1972)の組曲(12:10)も収録されている。

Jerry Fielding

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ラ・スクムーン La scoumoune

作曲・指揮:フランソワ・ド・ルーベ
Composed and Conducted by François de Roubaix

(伊CAM / CSE 035)

「ベラクルスの男」(1967)「暗黒街のふたり」(1973)「ル・ジタン」(1975)「ブーメランのように」(1976)等のジョゼ・ジョヴァンニが、獄中で知り合った男をモデルに書いた小説「L'excommunie」を、自ら脚色し監督した1972年製作の犯罪映画。出演はジャン=ポール・ベルモンド、クラウディア・カルディナーレ、ミシェル・コンスタンタン、エンリケ・ルチェロ、アラン・モテット、アルド・ブフィ・ランディ、ミシェル・ペイルロン、アンドレア・フェレオル他。撮影はアンドレア・ウィンディング。第二次大戦前のマルセイユを舞台に、ギャングのロベール(ベルモンド)が、無実の罪で投獄された親友ザヴィエルを救うため、殺人を犯して入獄し、2人で脱出を試みるが失敗。戦後釈放された2人は町に戻るが、ザヴィエルはギャング間の抗争で殺されてしまい、ロベールは親友の復讐のために一人敵陣に殴り込みに行く……。音楽を担当したフランソワ・ド・ルーべは、1975年に36歳の若さでこの世を去った幻の作曲家で、彼の残したスコアはどれも親しみやすいメロディと極めて独創的な構成が素晴らしい名曲揃いである。この「ラ・スクムーン」は彼の代表作の1つで、オルゴールの奏でるメロディのような、どこか懐かしさを感じさせるメインテーマが、犯罪映画とは思えないほど明るく素朴なタッチで印象的。ジャズをベースにした「Pigalle 1944」や「Avant Guerre」、美しいラブ・テーマの「Gerogia et Robert」も良い。ド・ルーベは、この作品以外にも、「サムライ」(1967)「ベラクルスの男」(1967)「冒険者たち」(1967)「さらば友よ」(1968)「オー!」(1968)「ジェフ」(1969)「ラムの大通り」(1971)「追想」(1975)といった作品の音楽を担当しているが、中でもジャン=ピエール・メルヴィル監督の名作「サムライ」のムーディなスコアや、ロベール・アンリコ監督の「冒険者たち」のスコアは、フランス映画音楽史上に残る傑作。彼の主要な作品は、以下のコンピレーション・アルバムで聴くことができる。

「Les plus belles musiques de films de François de Roubaix Vol.1」
  (仏Hortensia / CD CH 622) 1990

Le vieux fusil 追想、Ou est passe Tom?、Ho オー!、Dernier domicile connu、Pour un sourire、La mer est grand、Le rapace ベラクルスの男、Boulevard du Rhum ラムの大通り、Le samourai サムライ、Le gobbo、R.A.S.、Les grandes gueules、L'homme orchestre

「Les plus belles musiques de films de François de Roubaix Vol.2」
  (仏Hortensia / CD CH 623) 1990

Les aventuriers 冒険者たち、Les amis、Les chevaliers du ciel、Les levres rouges、La peau de torpedo、Adieu l'ami さらば友よ、Jeff ジェフ、La scoumoune ラ・スクムーン、L'etalon、Enqueteurs associes、Les anges、Le trois de coeur

「François de Roubaix: 10 ans de musique de film」
(仏ODEON / 821 237 2)1998
(1965年から75年にかけての10年間にド・ルーベが手がけた作品を集めた2枚組のコンピレーション)

「François de Roubaix: Anthologie Vol.1」
(仏Play Time / PL 9909049)1999

François de Roubaix

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シンドバッド7回目の航海 The Seventh Voyage of Sinbad

作曲・指揮:バーナード・ハーマン
Composed and Conducted by Bernard Herrmann

(米Varese Sarabande / VCD47256)

 ★TOWER.JPで購入(Prometheus Complete盤)

「アルゴ探検隊の大冒険」と並ぶ、チャールズ・H・シニア(製作)=レイ・ハリーハウゼン(特撮)=バーナード・ハーマン(音楽)のコラボレーションによる冒険ファンタジー映画の傑作。1958年製作。監督はネイザン・ジュラン。出演はカーウィン・マシューズ、キャスリン・グラント、トリン・サッチャー、リチャード・アイヤー、アレックス・マンゴー、ハロルド・カスケット他。脚本はケネス・コルブ、撮影はウィルキー・クーパーが担当。魔術師(サッチャー)によって縮小されてしまった姫(グラント)を救うため、怪物たちの棲む謎の島へと向かうシンドバッド(マシューズ)。名手ハリーハウゼンのダイナメーション特撮によって息を吹き込まれたクリーチャーたち(一つ眼の巨人サイクロプス、双頭の鷲ロック鳥、火を吹くドラゴン、骸骨剣士等)と、シンドバッドとの壮絶な闘いを描く。バーナード・ハーマンによるスコアは、彼のファンタジー映画音楽の中でもベストの1つ。「センス・オブ・ワンダー!」そのものの血湧き肉躍るストレートフォワードな序曲や、サイクロプス、ロック、ドラゴンといったクリーチャーを表現したイマジナティブでダイナミックな音楽が素晴らしい。特にチューバとトランペットによる短いフレーズの積み重ねに、シロフォン(木琴)とパーカッションによるアクセントを加えた骸骨剣士との闘いの音楽は、独創性に満ちた映画音楽の傑作。まさにドラマティック・アンダースコアの教科書のようなクラシック・フィルムスコアである。このシンドバッドのシリーズは、同じチャールズ・H・シニア製作=レイ・ハリーハウゼン特撮による「シンドバッド黄金の航海」(1973)と、「シンドバッド虎の目大冒険」(1977)が続編として作られたが、「黄金の航海」はミクロス・ローザ、「虎の目大冒険」はロイ・バッドがスコアを担当した。いずれも優れた映画音楽だが、このハーマンのスコアの強烈なインパクトには及ばない。

Bernard Herrmann

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(TV)シャーロック・ホームズの冒険 Sherlock Holmes (TV)

作曲・指揮:パトリック・ゴワーズ
Composed and Conducted by Patrick Gowers

演奏:レン管弦楽団、セント・ポール寺院合唱団、ガブリエリ弦楽四重奏団
Performed by The Wren Orchestra of London、St.Paul's Cathedral Choir、The Gabrieli String Quartet

(英TER / CDTER 1136)

cover
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1984〜85年にイギリスのグラナダテレビジョンが製作した「The Sign of Four」「The Adventures of Sherlock Holmes」「The Return of Sherlock Holmes」の音楽を収録したアルバム。このTVシリーズは日本ではNHKで放映され、ホームズを見事に演じたジェレミー・ブレットが好評だった。製作はマイケル・コックスで、監督はポール・アネット、ジョン・ブルース、デヴィッド・カーソン、アラン・グリント他が担当。ドクター・ワトソンは当初デヴィッド・バークが、第14話以降はエドワード・ハードウィックが演じた。ゲストスターとして、チャールズ・グレイ(マイクロフト・ホームズ役)、ゲイル・ハニカット(アイリーン・アドラー役)、エリック・ポーター(モリアーティ教授役)、ジェレミー・ケンプ(グリムスビー・ロイロット医師役)、ハリー・アンドリュース(ベリンジャー卿役)等のベテラン俳優が各話に出演した。音楽を担当したパトリック・ゴワーズは、本作品以外はあまり知られていないイギリスの作曲家だが、この音楽はコナン・ドイルの原作小説の世界を見事に表現した傑作スコアである。すすり泣くようなヴァイオリン・ソロ(原作ではホームズ自身がヴァイオリン奏者として描かれているので、ホームズ映画の音楽にはヴァイオリン・ソロというのが定石)による繊細なタッチのオープニング・テーマ「221B Baker Street」や、牧歌的な美しさに満ちた「Elsie Cubitt (from "The Dancing Men")」、サスペンスフルな追跡シーンの音楽「River Chase (from "The Sign of Four")」、可憐なアイリーン・アドラーのテーマ「Irene Adler (from "A Scandal in Bohemia")」、荘厳な「Lucretia Venucci and Her Family (from "The Six Napoleons")」、いかにもイギリス的で勇壮なマーチ「The Illustrious Lord Bellinger (from "The Second Stain")」等、どの曲も極めてリッチで情感豊かな上質の映画音楽である。ゴワーズのその他のサントラ・アルバムとしては、「(未公開/TV)スマイリーと仲間たち(Smiley's People)」(英BBC)「(未公開)Stevie」(米CBS)「(未公開)The Virgin and the Gypsy」(米Steady、以上全てLPのみ)等が出ているが、この中では「スマイリーと仲間たち」が荘厳なコーラスによる極めて抑制されたタッチのスコアで、ジョン・ル・カレのスパイ小説の雰囲気が良く出ていた。

Patrick Gowers

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(未公開)シューティング・パーティ The Shooting Party

作曲・指揮:ジョン・スコット
Composed and Conducted by John Scott

演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the Royal Philharmonic Orchestra

(米JOS / JSCD 113)

1984年製作のイギリス映画。監督はアラン・ブリッジス。出演はジェームズ・メイソン(遺作)、エドワード・フォックス、サー・ジョン・ギールガッド、ジュディ・ボウカー、ロバート・ハーディ、ゴードン・ジャクソン、ドロシー・トゥティン、シェリル・キャンベル、ルパート・フレイザー、ジョリス・スタイック、レベッカ・サイア、サラ・バデル、アーロン・イペール他。イゾベル・コルゲイトの原作をジュリアン・ボンドが脚色。撮影はフレッド・タムズ、製作はジェフリー・リーヴ。第一次大戦直前の1913年のイギリスを舞台に、大地主のサー・ランドルフ・ネットゥルビー(メイソン)と彼の妻(トゥティン)が、上流階級の人々を週末の狩猟に招待したことから起こる悲劇を描いたドラマ。音楽はジョン・スコットだが、これは彼の英国人気質が極めて強く現われたスコアで、彼自身にとって最も容易に作曲することができたスコアの1つだという。悩まず苦しまずにサっと出来たものが、結果としてそのアーティストにとってベストの作品である場合は多い。その意味でもこれはスコットのベスト・スコアの1つだと思う。このCDのジャケットはたちこめる霧の中にたたずむメイソンとフォックスのイラスト(Varese Sarabandeから出ていたオリジナルのLPと同じ)だが、冒頭の「Main Title」はまさにこの絵の雰囲気そのままで、深い霧に覆われた森の早朝のような、静寂の中にピンと張り詰めた緊張感を感じさせる見事な音楽である。続く「The First Day」も同様のタッチだが、「The Letter」〜「Dinner at Nettleby」では、優雅で美しい第二主題が現れる。「Lionel and Olivia」はメインテーマのバリエーションだが、「Thou Shalt Not Kill」は勇壮かつ軽快なファンファーレでアクセントを付けている。「Luncheon by the Lake」では更に美しい第三主題が現れる。中盤で「Spanish Dance」「Nettleby Polka」といったダンス音楽が入り、クライマックスのブラスとティンパニによる重厚なリズムによる「The Competition」へと展開する。クラシカルで美しい「The Consequence」に続き、メインテーマのリプライズである「Epilogue」で全体を締める。非常に抑制されたタッチだが、どの曲も情感豊かで素晴らしい。「グレイストーク」「(未公開/TV)ガンジーと総督/自由への長い道」と並ぶスコットの傑作スコアである。尚、このCDには「炎のランナー」「グレイストーク」等のヒュー・ハドソン監督によるドキュメンタリー映画「(未公開)Birds and Planes」の音楽が5曲含まれているが、こちらは小編成のストリングスとピアノによる繊細なスコア。

John Scott

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シルバラード Silverado

作曲・指揮:ブルース・ブロートン
Composed and Conducted by Bruce Broughton

(米Intrada / MAF 7035D)

 ★TOWER.JPで購入(Intrada Complete盤)

「白いドレスの女」等のローレンス・カスダンが1985年に製作・監督したウエスタン。出演はケヴィン・クライン、スコット・グレン、ケヴィン・コスナー、ダニー・グローヴァー、ジョン・クリーズ、ロザンナ・アークエット、ブライアン・デネヒー、ジェフ・ゴールドブラム、リンダ・ハント、ケティ・フラド、アマンダ・ワイス、ジェフ・フェイヒー、マーヴィン・J・マッキンタイア、ブラッド・ウィリアムズ、ビル・サーマン、ジェームズ・ギャモン他。脚本はマークとローレンスのカスダン兄弟が執筆。撮影はジョン・ベイリー。クライン、グレン、コスナー、グローヴァー扮する4人のガンマンが、グレンの故郷であるシルバラードで、住民を苦しめる悪徳牧場主やその一味の保安官に戦いを挑む、というストーリー。これは、TVや低予算映画を中心に音楽を担当していたブルース・ブロートンが、ハリウッドのメジャーコンポーザーになるきっかけとなった痛快無比のウエスタン・スコアで、いまだに彼のベストの仕事の1つである。冒頭の「Silverado Main Title」はフル・オーケストラによるパワフルで豪快なメインテーマで、この主題は様々なバリエーションで何度も登場する。中盤の「On to Silverado」では、より牧歌的でノスタルジックな「Settler's Theme」がメインテーマと交互に現れるが、これは名曲。「The Getaway / Riding as One」「The McKendrick Attack」「Augie's Rescue」「Slick, Then McKendrick」といったダイナミックなアクション・スコアも聞き応えがある。「End Credits (We'll Be Back)」でのフルパワーによるクロージングも抜群にかっこいい。かつての正統派西部劇音楽の流れを汲む堂々としたスコアだが、ティオムキン、ニューマン、バーンステイン等によるクラシックとは少し異なり、より現代的でシャープな感覚を持っているところが上手い。このスコアは1985年度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされた。ブルース・ブロートン(1945年〜)は、この他に「(TV)引き裂かれた祖国/ブルー&グレイ」(1983)「スペース・パイレーツ」(1984)「ミリィ/少年は空を飛んだ」(1985)「ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎」(1985)「ドラキュリアン」(1987)「ハリーとヘンダソン一家」(1987)「プレシディオの男たち」(1988)「ムーンウォーカー」(1988)「カナディアン・エクスプレス」(1990)「(未公開)ビアンカの大冒険/ゴールデン・イーグルを救え!」(1990)「ジャイアント・ベビー」(1993)「トゥームストーン」(1993)「バラ色の選択」(1993)「奇跡の旅」(1993)「34丁目の奇跡」(1994)「赤ちゃんのおでかけ」(1994)「ザ・ターゲット」(1996)「ロスト・イン・スペース」(1998)等を手がけているベテラン。

Bruce Broughton

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ある日どこかで Somewhere in Time

作曲・指揮:ジョン・バリー
Composed and Conducted by John Barry

(米MCA / MCAD-31164)

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「(TV)ミステリー・ゾーン」や、スピルバーグの「激突!」、ロジャー・コーマンによるポー原作の怪奇映画等で知られるホラー作家/脚本家リチャード・マシスンの小説「Bid Time Return」を彼自身が脚色し、ジャノット・シュワークが監督したファンタジー+ラブストーリー。1980年製作。出演はクリストファー・リーヴ、ジェーン・シーモア、テレサ・ライト、スーザン・フレンチ、クリストファー・プラマー、ビル・アーウィン、ジョージ・ヴォスコヴェック、ジョン・アルヴィン、エドラ・ゲイル、オードリー・ベネット、ウィリアム・H・メイシー、ローレンス・コーヴェン、ティム・カズリンスキー他。製作は、同じくマシスン原作の「奇蹟の輝き」もプロデュースしたスティーヴン・サイモン(ここでのクレジットはスティーヴン・ドイッチェになっている)。撮影はイシドア・マンコフスキーが担当。一枚の肖像画に描かれた美女(シーモア)に心を奪われた劇作家(リーヴ)が、その女性に逢いたいという想いを募らせ、ついに時間の壁を越えて彼女に会いに行く、というタイムトラベルものの恋愛映画。ニューロティックなホラー・ストーリーを得意とするマシスンにしては、いつもと作風の違うロマンティックな物語だった。ジョン・バリーによる音楽は、彼の数多くの作品中でも最も美しく感動的なスコアの1つで、映画音楽ファンにとっては非常にポピュラーな作品。冒頭のフルート・ソロとオーケストラによる「Somewhere in Time」と、最後のピアノ(演奏はロジャー・ウィリアムス)とオーケストラによる「Theme from "Somewhere in Time"」で完全な形で演奏されるメインテーマがこの上なくロマンティック。「The Old Woman」で現れる第二主題や、「A Day Together」での第三主題もバリーらしい美しさに満ちている。全体で32分弱の長さで少し物足りない感じがするが、バリーのベスト・スコアの1つであることは間違いない。途中にチェット・スウィアトコフスキーのピアノ・ソロによるラフマニノフ作曲の「パガニーニの主題によるラプソディー」が収録されているが、この曲はバリーによるスコア全体の雰囲気にうまく溶け込んでいる。

John Barry

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サブウェイ・パニック The Taking of Pelham One Two Three

作曲・指揮:デヴィッド・シャイア
Composed and Conducted by David Shire

(米Retrograde / FSM-DS-123)

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ジョン・ゴーディ原作のベストセラー小説をベースに、「シャレード」「料理長殿、ご用心」等の名手ピーター・ストーンが脚本を書いた1974年製作の傑作サスペンス。監督はジョセフ・サージェントだが、この人はこれ以外にろくな作品がない。出演はウォルター・マッソー、ロバート・ショー、マーティン・バルサム、ヘクター・エリゾンド、アール・ヒンドマン、ディック・オニール、ジェリー・スティラー、トニー・ロバーツ、リー・ウォレス、ドリス・ロバーツ、ケネス・マクミラン、ジュリアス・ハリス、ジェームズ・ブロデリック、サル・ヴィスキューゾ他。製作はガブリエル・カツカとエドガー・J・シェリック。撮影はオーウェン・ロイズマンが担当。ショー率いる4人組がニューヨークの地下鉄をハイジャックし、乗客を人質にして現金100万ドルを1時間以内に届けるようにNY市当局に要求する。マッソー扮する地下鉄公安部長と冷徹なテロリストのショーとの虚々実々の駆け引きが秀逸。タイムリミットが迫る緊迫した感覚を巧く描写したサスペンス演出(特に編集)と、全編に散りばめられたユーモアの絶妙のバランスが見事である。冒頭に東京の地下鉄のお偉いさんがマッソーを訪問してNY地下鉄の設備を見学していくシーンがあるがこれは爆笑もの。映画のエンディングの1ショットも最高。この作品は1998年にTV映画としてリメイクされている。デヴィッド・シャイアの音楽は、バウンシーなジャズをベースとしたハードボイルドなタッチが素晴らしい傑作。同じ犯罪映画音楽のジャズでもラロ・シフリンやジェリー・フィールディングよりもっと武骨でハードエッジな感覚が、この映画の舞台となるNYの「組織化された無秩序」をうまく表現している。一度聴くと耳から離れない冒頭の「Main Title」から映画のトーンを完璧に確立しているが、ハイジャックのシーンの音楽「The Taking」「More Taking」や、犯人の要求に対応するために連邦準備銀行が大急ぎで身代金を用意するシーンのビジーな音楽「Money Montage I & II」等でのハードなタッチが実にかっこいい。これは作曲家のシャイア自身が保管していたオリジナルスコアのテープ(一部モノラル)を使用してルーカス・ケンドールがプロデュースしたプロモーショナルCDで、最終的に映画で使用されなかった曲も含んでいる。因みにブライアン・ヘルゲランド監督/メル・ギブソン主演の「ペイバック」(1999)は、70年代の犯罪映画のタッチを再現した佳作だったが、この映画のメインタイトル(クリス・ボードマン作曲)は、「サブウェイ・パニック」のテーマそっくりである。デヴィッド・シャイア(1937年〜)は、この映画の他に「カンバセーション…盗聴…」(1973)「続・おもいでの夏」(1973)「さらば愛しき女よ」(1975)「ヒンデンブルグ」(1975)「大統領の陰謀」(1976)「弾丸特急ジェット・バス」(1976)「特攻サンダーボルト作戦」(1976)「ジョーイ」(1977)「ノーマ・レイ」(1979)「結婚しない男」(1981)「ガープの世界」(1982)「2010年」(1984)「オズ」(1985)「ショート・サーキット」(1986)「パリス・トラウト」(1990)等を手がけている実力派。特に「さらば愛しき女よ」のハードボイルドでけだるいタッチが秀逸だった。「ノーマ・レイ」の挿入歌『流されるままに』で、1979年度アカデミー賞の歌曲賞を受賞している。

David Shire

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アラバマ物語 To Kill a Mockingbird

作曲・指揮:エルマー・バーンステイン
Composed and Conducted by Elmer Bernstein

(英Mainstream / MDCD 602)

cover
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★TOWER.JPで購入(OCTAVE/CHERRY RED盤) 

ピュリッツァー賞を受賞したハーパー・リーの小説「ものまね鳥を殺すには」を劇作家のホートン・フートが脚色し、「サンセット物語」「レッド・ムーン」等のロバート・マリガンが監督した作品。1962年製作。出演はグレゴリー・ペック、メアリー・バダム、フィリップ・アルフォード、ジョン・メグナ、ブロック・ピータース、ロバート・デュヴァル(デビュー作)、フランク・オーヴァートン、ローズマリー・マーフィ、ポール・フィックス、コリン・ウィルコックス、アリス・ゴーストリー、ウィリアム・ウィンダム、キム・スタンリー(ナレーション)他。製作は監督としても知られるアラン・J・パクラ。撮影はラッセル・ハーランが担当。1939年の南部アラバマ州を舞台に、婦女暴行罪で訴えられた黒人トム(ピータース)の弁護を引き受けることになった弁護士フィンチ(ペック)の苦悩と、人種偏見に満ちた町の人々の横暴を、フィンチの子供たちの視点から淡々と描く。この映画は、ペックが1962年度アカデミー賞の主演男優賞を受賞した他、脚色賞、美術監督・装置賞を受賞し、作品賞、監督賞、助演女優賞(バダム)、撮影賞、作曲賞にノミネートされた。エルマー・バーンステインの音楽は、彼自身のお気に入りであり、個人的にも彼のベスト・スコアだと思う。何と言ってもピアノと小編成のオーケストラによる非常にジェントルでアメリカ的なメインテーマが素晴らしい。バーンステインは当初このスコアのアイデアを確立するまでかなり苦労したらしいが、子供の視点からの描写に着目し、高音域のピアノ、ベル、ハープといった子供の音楽を想起させる楽器によりスコア全体のタッチをまとめたという。軽快な西部劇調の「Roll the Tire」や、「Tree Treasure」「Lynch Mob」「Children Attacked」といった激しい部分もあるが、全体のトーンは極めてリリカルで美しく、感動的である。このアルバムはオリジナルのサントラLPの内容を1991年にそのままCD化したものだが、リマスターしている割には音質がかすれてこもりがちで、収録時間も短い(無関係なトラックがボーナスとして5曲含まれているが、無関係なのだからはっきり言って必要もない)。サントラではないが、1970年代にバーンステインが自費でプロデュースした「Elmer Bernstein Film Music Collection」という映画音楽の再録音シリーズ(LP)の1枚として、バーンステイン自身の指揮によるロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の見事な演奏があったが、これは現時点でCD化されていない(バーンステインはこのシリーズでかなりの損失を被ったようで、CD化の権利を譲渡したがらないらしい)。また、1996年にバーンステインがロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団を指揮して、再度このスコアを録音しているが、これも録音・演奏ともに素晴らしい(米Varese Sarabande / VSD-5754)。個人的には上記ロイヤル・フィルの演奏によるバージョンが最もバーンステインの想い入れがこもっており、気に入っている。

Elmer Bernstein

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トイ・ソルジャー Toy Soldiers

作曲・指揮:ロバート・フォーク
Composed and Conducted by Robert Folk

演奏:ダブリン交響楽団
Performed by Dublin Symphony Orchestra

(米Intrada / MAF 7015D)

1991年製作のアクション映画。監督はダニエル・ペトリ,Jr.。出演はショーン・アスティン、ウィル・ウィートン、キース・クーガン、ジョージ・ペレス、T・E・ラッセル、デンハム・エリオット、ルイス・ゴセット,Jr.、アンドリュー・ディヴォフ、R・リー・アーメイ、ジェシー・ドーラン他。ウィリアム・P・ケネディの原作を基に、監督のペトリ,Jr.とデヴィッド・コープ(「カリートの道」「ジュラシック・パーク」「ミッション:インポッシブル」等)が脚本を担当。寄宿制の男子校レジス・スクールが、コロンビア人テロリストにハイジャックされ、救出作戦が難航する中、悪ガキ・グループが密かにテロリストたちに立ち向かう、という「ダイ・ハード」と青春学園ものを掛け合わせたようなストーリー。ロバート・フォークによるスコアはオーソドックスな劇伴音楽だが、学園ものの爽快さとアクションの緊迫感を非常にうまくブレンドして表現している。冒頭の「Regis School」でのヒロイックなタッチの少年たちのテーマが、「All's Well」「The Celler」等でもアレンジを変えて登場するが、この曲のイメージも実に爽やか。それ以外の部分は、「Escape from Barranquilla」「Closing In」「Billy Escapes」「Regis Captured」「Jack Gets It」「Back to Regis」「The End of Cali」等、ほぼ全編が極めて緊迫した激しいアクション音楽の連続で、非常に聴き応えがある。ロバート・フォークは今のところあまりメジャーな仕事はないが、大編成オーケストラをガンガン鳴らす非常にエモーショナルなドラマティック・スコアを書く実力派作曲家で、この作品以外に「ポリスアカデミー」(1984)「キャント・バイ・ミー・ラブ」(1987)「マイルズ・フロム・ホーム」(1988)「ネバーエンディング・ストーリー第2章」(1990)「ミラクルマスターU/L.A.時空大戦」(1991)「(未公開)イン・ザ・アーミー/こちら最前線、異常あり」(1994)「(未公開)セントラルパークの妖精」(1994)「パラダイスの逃亡者」(1994)「ジム・キャリーのエースにおまかせ」(1995)「バーチャル・ウォーズ2」(1996)「マキシマム・リスク」(1996)「ナッシング・トゥ・ルーズ」(1997)「メジャーリーグ3」(1998)等、アクションものだけでなく、コメディやアニメーション等も手がけている。
プロモーション盤だが、フォークのこれまでの代表作を集めた以下のコンピレーション(CD2枚組)がリリースされており、どのスコアも極めてドラマティックな上に著名なオーケストラによる迫力ある演奏で、アルバムとしての内容の濃さと完成度の高さに圧倒される。

「Robert Folk: Selected Suites」(米Knightsbridge / RF2001/2)1993
(The Thief and the Cobbler、Toy Soldiers、The Neverending Story II、Tremors、Troll in Central Park、Miles from Home、The Planets、Can't Buy Me Love、Police Academy、To Dream of Roses)

Robert Folk

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アンダー・ファイア Under Fire

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by Jerry Goldsmith

(Warner Bros. / WPCP-4936)

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★TOWER.JPで購入(FSM盤) 

1983年製作。監督は「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」等のロジャー・スポティスウッド。出演はニック・ノルティ、ジーン・ハックマン、ジョアンナ・キャシディ、エド・ハリス、ジャン=ルイ・トランティニアン、リチャード・マズア、ルネ・エンリケ、ハミルトン・キャンプ、ホリー・パランス他。クレイトン・フローマンの原作を基に「さよならゲーム」等のロン・シェルトンとフローマンが脚本を執筆。撮影はジョン・オルコット。1979年の中南米ニカラグアを舞台に、ソモサ大統領率いる政府軍とサンディニスタ民族解放戦線との抗争の中、取材のために戦地に派遣された3人のジャーナリスト(ハックマン、ノルティ、キャシディ)を描いたリアリスティックなドラマ。ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、オーケストラとシンセサイザーに、パン・フルート等のエスニック・サウンドを加えたラテン・フレーバーの強い音楽だが、何といっても全12曲中の8曲にフィーチャーされたパット・メセニーによるギターが素晴らしい。冒頭の「Bajo Fuego」はストイックでサスペンスフルなタッチがいかにもゴールドスミスらしい名曲で、ここでのメセニーのギターはシャープでダイナミック。「Sniper」「19 de Julio」「Rafael」や、ラストの「Nicaragua」等での、よりラテン色の強い第二主題も非常に印象的で、ゴールドスミスによるラテン系スコアの中では最も完成度の高い作品だと思う。彼はこのスコアで1983年度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされた。これは日本のワーナー・ミュージックから出ているCDだが、ゴールドスミスによるサントラ・アルバムというより、ギタリストのパット・メセニーのファン向けにリリースされたもの。その後、デジタルリマスターによるCD(曲目は同じ)がドイツと日本でリリースされている。

Jerry Goldsmith

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バイキング The Vikings

作曲:マリオ・ナシンベーネ
Composed by Mario Nascimbene

指揮:フランコ・フェラーラ
Conducted by Franco Ferrara

(伊Legend / CD9)

「海底二万哩」(1954)「バラバ」(1962)「ミクロの決死圏」(1966)「トラ・トラ・トラ!」(1970)「ラスト・ラン/殺しの一匹狼」(1971)等のリチャード・O・フライシャーが1957年に監督したスペクタクル。出演はカーク・ダグラス(製作総指揮も兼ねている)、アーネスト・ボーグナイン、ジャネット・リー、トニー・カーティス、アレクサンダー・ノックス、ジェームズ・ドナルド他。エディソン・マーシャルの原作を基にカルダー・ウィリンガムが脚本を担当。撮影は監督としても知られる名手ジャック・カーディフ。8世紀ヨーロッパを舞台に、悪名高きバイキングのレグナー(ボーグナイン)が、英国王妃を陵辱して生ませた子エリック(カーティス)と、彼の異母兄であるエイナー(ダグラス)との確執と冒険を描く歴史活劇。音楽を担当したマリオ・ナシンベーネ(1913年〜)は、日本ではそれほど知られていないが、イタリア映画界ではニーノ・ロータと並び有名な大作曲家で、「裸足の伯爵夫人」(1954)「アレキサンダー大王」(1956)「武器よさらば」(1957)「静かなアメリカ人」(1958)「ソロモンとシバの女王」(1959)「激しい季節」(1959)「コンスタンチン大帝」(1960)「剣と十字架」(1961)「バラバ」(1962)「恐竜100万年」(1966)「恐竜時代」(1969)「高校教師」(1972)等、ヨーロッパ映画だけでなくハリウッド映画も多数手がけている。極めて独創的な音楽を書く人で、タイプライターや車のクラクション等特殊な音源を楽器として使用したりと様々な実験を試みたことでも知られている。この「バイキング」は、ナシンベーネの代表作の1つであるスケールの大きい活劇音楽で、オーケストラとコーラスによる非常にドラマティックかつ美しいスコア。冒頭の「Violences and Rapes of the Vikings」は、船を漕ぐようなティンパニの重厚なリズムにホルンによる勇壮なメインフレーズがかぶさり、フル・オーケストラによる迫力ある演奏へと展開する。続く「Regnar Returns」はメインテーマのバリエーションから美しい第二主題へとつながる。更に、幻想的なラブテーマである「Eric and Morgana Escape 〜 Love Scene」や、10分以上に及ぶダイナミックな戦闘音楽「The Vikings Attack the Castle 〜 Battle and Death of Aella」、エキゾチックなコーラスによる壮大なフィナーレ「Funeral 〜 End Titles」等、重厚なドラマティック・スコアの魅力が堪能できる傑作。尚、このCDは同じナシンベーネによる「ソロモンとシバの女王」とのカップリングになっている。

Mario Nascimbene

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八つ墓村 Village of 8 Gravestones

作曲・指揮:芥川也寸志
Composed and Conducted by Yasushi Akutagawa

演奏:新室内楽協会
Performed by the Tokyo Concert Orchestra

(SLC / SLCS-5077)

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★TOWER.JPで購入(松竹 国内盤) 

横溝正史原作の金田一耕助を主人公としたオカルト調ミステリ(1977年松竹製作)。監督は「張込み」(1958)「ゼロの焦点」(1961)「砂の器」(1974)「事件」(1978)「鬼畜」(1978)「疑惑」(1982)「迷走地図」(1983)等、ミステリドラマを得意とする野村芳太郎。出演は萩原健一、小川真由美、山崎 努、山本陽子、市原悦子、山口仁奈子、中野良子、加藤 嘉、井川比佐志、夏木 勲、田中邦衛、稲葉義男、橋爪 功、大滝秀治、藤岡琢也、渥美 清(金田一耕助役)他。脚本は橋本 忍、撮影は川又 昂が担当。数奇な出生の過去を持つ寺田辰弥(萩原)が、初めて会った母方の祖父・井川丑松(加藤)の変死を眼前で目撃したことを機に、親戚筋の森 美也子(小川)の導きで忌まわしい歴史を持つ生まれ故郷の八つ墓村を訪れる。村の富豪・多治見家の跡取りとして迎えられる辰弥だったが、彼が村に来た翌日から毒物を用いた殺人事件が続発していく……。故・渥美 清が珍しく寅さん以外のシリアスな役を演じている。芥川也寸志作曲のスコアは、彼自身が「私の数多くの映画音楽の中で、抒情的なもの、心理的なもの、官能的なもの、象徴的なものなど、手法上のあらゆる要素がふくまれていて、私の映画音楽の集大成です」と語っているように、彼の晩年の傑作である。全体のトーンはホラー調の映画の雰囲気にふさわしくダークなタッチだが、純日本的でどこか懐かしさを感じさせるドラマティックな「メインタイトル」や、極めて官能的で美しいゆったりとしたワルツ調の「青い鬼火の淵(道行のテーマ)」、荒々しく暴力的な「惨劇・32人殺し」等、どの曲も非常にエモーショナルなパワーに満ちている。また、芥川作曲によるNHK大河ドラマ「赤穂浪士」のテーマに通ずる重厚な「落武者のテーマ」は、最もこの作曲家の個性がよく出た曲だろう。尚、このCDには映画のパブリシティ用に事前に録音された「道行のテーマ」と「落武者のテーマ」の別バージョン(演奏は新日本フィル)も収録されている。芥川也寸志は、日本を代表する現代音楽・映画音楽作曲家の1人で、「ゼロの焦点」(1961 松竹大船)「雪之丞変化」(1963 大映京都)「地獄変」(1969 東宝)「砂の器」(1974 松竹/橋本プロ)「八甲田山」(1977 橋本プロ/東宝映像/シナノ企画)「事件」(1978 松竹)「鬼畜」(1978 松竹)「日蓮」(1979 永田プロ)「配達されない三通の手紙」(1979 松竹)「わるいやつら」(1980 松竹/霧プロ)「疑惑」(1982 松竹/霧プロ)等、100本あまりの映画音楽を手がけている。彼の代表作の幾つかは以下のコンピレーションCDで聴くことができる。

「芥川也寸志の世界」
(SLC / SLCS-5085)
(「煙突の見える場所」「猫と庄造と二人のをんな」「道産子」「野火」「ゼロの焦点」「雪之承変化」「五燐の椿」「波影」「影の車」「地獄変」「八甲田山」「八つ墓村」「鬼畜」)
このCDは1997年にSLCレーベルから出ていたものだが、全く同じ内容のCDが、ポリスターから再発されている(Polystar / PSCR-5819)。
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Yasushi Akutagawa

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ワーテルロー Waterloo

作曲・指揮:ニーノ・ロータ
Composed by Nino Rota

指揮:ブルーノ・ニコライ
Conducted by Bruno Nicolai

(伊Legend / CD20)

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1969年製作のイタリア=ソ連合作映画。監督は「戦争と平和」等で知られるセルゲイ・ボンダルチュク。出演はロッド・スタイガー、クリストファー・プラマー、オーソン・ウェルズ、ジャック・ホーキンス、ヴァージニア・マッケンナ、ダン・オハーリヒー、ジアンニ・ガルコ、イヴォ・ガラーニ、アンドレア・チェッチ、ピーター・デイヴィス、ルパート・デイヴィス、フィリップ・フォルケ他。製作はディノ・デ・ラウレンティス。脚本はH・A・L・クレイグ、ヴィットリオ・ボニチェリとボンダルチュク。撮影はアルマンド・ナンヌッツィが担当。ナポレオン(スタイガー)とウェリントン提督(プラマー)の人物像を中心に、ヨーロッパの運命を決定したワーテルローの戦いを描く史劇スペクタクル。ソ連版のオリジナルは240分に及ぶ大作。音楽はフェデリコ・フェリーニ監督とのコラボレーションや、「太陽がいっぱい」「ゴッドファーザー」「ロミオとジュリエット」等で有名なイタリアの名作曲家ニーノ・ロータだが、この「ワーテルロー」のスコアは、彼のシリアスなドラマティック・アンダースコア中でも最も高尚で格調高い作品の1つで、内容の芸術性やドラマティックなパワーはミクロス・ローザの「ベン・ハー」に勝るとも劣らない。「ラ・マルセイエーズ」のフレーズを効果的に組み込んだスペクタキュラーなメインタイトル「Titoli - Ritorno dall'Elba」や、ロシア的な響きを持ったマーチ「Notte di vigilia - Parata delle truppe napoleoniche」、極めて厳格でストイックなタッチの「E la guerra continua」等、重厚なオーケストラル・スコアが展開する傑作。ここではエンニオ・モリコーネ作品の指揮者としても知られる映画音楽作曲家のブルーノ・ニコライが、オーケストラの指揮を担当している。

Nino Rota

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荒鷲の要塞 Where Eagles Dare

作曲・指揮:ロン・グッドウィン
Composed and Conducted by Ron Goodwin

(米EMI / CDP 79 4094 2)

★TOWER.JPで購入(FSM盤) 

イギリスの冒険小説作家アリステア・マクリーンの脚本による1968年製作のアメリカ=イギリス合作映画。監督は「戦略大作戦」「ハイ・ロード」等のブライアン・G・ハットン。出演はリチャード・バートン、クリント・イーストウッド、メアリー・ユーア、パトリック・ワイマーク、マイケル・ホーダーン、ドナルド・ヒューストン、ピーター・バークワース、ロバート・ビーティ、アントン・ディフリング、イングリッド・ピット、ファーディ・メイン他。製作はジェリー・ガーシュインとエリオット・カストナー。撮影はアーサー・イベットソン。マクリーンは後に自らこの脚本をノヴェライズしているが、これは純粋なストーリーテリングの巧さでは彼のベスト作だと思う。雪山の頂上にあるドイツ軍の要塞「シュロス・アドラー(鷲の城)」に捕われたアメリカの将軍を、スミス少佐(バートン)率いる英国情報部員と、米軍特殊部隊のシェーファー中尉(イーストウッド)が救出に向かうという設定だが、途中からストーリーが二転三転して誰が敵だか味方だかわからなくなっていくあたりがいかにもマクリーンらしい。ロン・グッドウィンのスコアは、冒頭の雪山上空を飛行する輸送機の空撮シーンでの、スネアドラムの淡々としたリズムから分厚いブラスによる勇壮なフレーズへと続くメインタイトルの厳格でヒロイックなタッチが、正に冒険活劇の幕開けにふさわしい。「Ascent on the Cable Car」や「Pursued by the Enemy」「Encounter in the Castle」「Descnet and Fight on the Cable Car」といった中盤のサスペンス音楽のピンと張り詰めた緊迫感も素晴らしいが、ラストの「Chase to the Airfield」でのマーチを基調とした重厚なアクション・スコアは職人芸的な上手さ。ミリタリー調アクション・スコアの傑作。ロン・グッドウィンは個人的に大好きなイギリスのベテラン作曲家で、特に戦争アクション映画の音楽を得意としているが、どの作品も純粋に映画的な興奮を感じさせるドラマティック・スコアばかりである。この「荒鷲の要塞」以外にも、「未知空間の恐怖/光る眼」(1960)「人間の絆」(1961)「人類SOS!」(1962)「剣豪ランスロット」(1963)「続・光る眼/宇宙空間の恐怖」(1963)「633爆撃隊」(1964)「クロスボー作戦」(1965)「素晴らしきヒコーキ野郎」(1965)「野獣の抱擁」(1966)「モンテカルロ・ラリー」(1969)「空軍大戦略」(1969)「フレンジー」(1972)「美女と野獣」(1975)「(未公開)キャンドルシュー/セント・エドモンドの秘宝」(1977)「ナバロンの嵐」(1978)といった作品を手がけている。尚、このCDは1990年にEMIレーベルからリリースされたもので、同じグッドウィンの傑作「633爆撃隊」とのカップリングになっている。
(このアルバムはサントラ音源ではなく、再録音盤である)

サントラ盤のレビュー

Ron Goodwin

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ワイルド・ギース The Wild Geese

作曲・指揮:ロイ・バッド
Composed and Conducted by Roy Budd

演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra

(カナダMFM / SRS 2002)

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1978年製作のイギリス映画。監督は「マクリントック」(1963)「シェナンドー河」(1965)「大西部への道」(1967)「バンドレロ」(1968)「大いなる男たち」(1969)「チザム」(1970)「ビッグケーヒル」(1973)「大いなる決闘」(1976)といったウエスタンや、「コマンド戦略」(1967)「(未公開)戦場の黄金律/戦争のはらわたU」(1978)「シーウルフ」(1980)といった戦争アクションを得意とする職人アンドリュー・V・マクラグレン。出演はリチャード・バートン、ロジャー・ムーア、リチャード・ハリス、ハーディ・クリューガー、フランク・フィンレイ、ジャック・ワトソン、スチュワート・グレンジャー、ウィンストン・ヌシュナ、ジョン・カニー、イアン・コール、ケネス・グリフィス、グリン・ベイカー、ロナルド・フレイザー、ブルック・ウィリアムズ、パーシー・ハーバート、デヴィッド・ラッド、アンナ・ベルイマン、ジェフ・コーリイ、ピーター・ファース、バリー・フォスター他。ダニエル・カーニーの原作を基に「十二人の怒れる男」等のレジナルド・ローズが脚本を担当。撮影は名手ジャック・ヒルデヤード。イギリスの銀行家マターソン(グレンジャー)に雇われたバートン、ムーア、ハリス、クリューガーを中心とする戦争プロフェッショナル達の傭兵部隊が、アフリカの某国で反乱軍に拉致された大統領の救出に向かう。ローズの脚本にしてはいたってストレートフォワードなストーリー展開だが、過去に数多くのアクション映画で主役をこなしてきた4人のベテラン主演俳優たちの魅力(特に作戦参謀レイファー役のハリスがいい味を出している)と、マクラグレンによる手堅い演出でソリッドなアクション作品に仕上がっている。この映画を更にパワーアップしているのは、ロイ・バッドによる豪快この上ないスコアである。冒頭の「Overture」は、大編成オーケストラによる冒険活劇音楽の魅力に満ちた血湧き肉躍る傑作。ボロディンのノクターンをベースにした「Rafer's Theme」や、「Reunion」といった静かな曲も良いが、何といっても「Wild Geese Theme」「Rescue of Limbani」「Flight to Africa」「Airport」「Compound」「Peter's Death」「Rafer's Death」といったアクション・スコアが素晴らしい。「Parade Ground」「Rafer's Son」「Left, Right!」といったバッド得意のマーチも痛快無比。収録時間が短いのでアッという間に終わってしまうのが唯一の難点。これはカナダのMasters Film Musicレーベルがこのスコアを初めてCD化したアルバムだが、既に絶版になっており、その後バッドの作品を多数リリースしているイギリスのCinephileレーベルが同じ内容のCDを再発している(英Cinephile / CIN CD 014)。また、この「ワイルド・ギース」と、同じくロイ・バッド作曲の「ワイルド・ギース2」「ファイナル・オプション」をカップリングにした海賊盤CDが出ている(Wild Records / WR-CD54192)。

Roy Budd

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Z  Z

作曲:ミキス・テオドラキス
Composed by Mikis Theodorakis

指揮:ベルナール・ジェラール
Conducted by Bernard Gerard

(米DRG / 32901)

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1969年製作のフランス=アルジェリア合作映画。監督は、「告白」(1969)「戒厳令」(1973)「ミッシング」(1982)「背信の日々」(1988)「ミュージックボックス」(1989)「マッド・シティ」(1997)等で知られる社会派コンスタンタン・コスタ=ガヴラス。出演はイヴ・モンタン、ジャン=ルイ・トランティニアン、ジャック・ペラン(製作を兼ねる)、フランソワ・ペリエ、イレーネ・パパス、レナート・サルヴァトーリ、マルセル・ボズッフィ、シャルル・デネ、ジョルジュ・グレ、ピエール・デュクス、ベルナール・フレッソン、ジュリアン・ギロマール、マガリ・ノエル他。ヴァシリ・ヴァシリコスの原作を基にホルヘ・センプランとコスタ=ガヴラスが脚本を執筆。撮影はラウール・クタール。ギリシャで1963年に起きた自由主義者ランブラキス暗殺事件をベースに、実在の軍事政権を糾弾した強烈な風刺作であると同時に、絶妙のストーリー・テリングでサスペンスを盛り上げる、ドキュメンタリーとエンターテインメントの最適のブレンドによる秀作。公開当時、明らかにギリシャ政権を批判しているため、同国では上映禁止となった。地中海に近い架空の国で、革新政党の指導者(モンタン)が、街頭演説中に暴漢(ボズッフィとサルヴァトーリ)に頭を殴られて死亡する。当局は自動車事故による脳出血と発表するが、これに疑問を抱いた予審判事(トランティニアン)は、新聞記者(ペラン)の協力を得て調査を行い、事件の背後に隠された陰謀に迫る。コスタ=ガヴラスの淡々とした演出が、名状しがたい迫力を生む傑作。1969年度アカデミー賞の外国語映画賞・編集賞、カンヌ国際映画祭審査員特別賞等を受賞。題名の「Z」は「Zei」、つまり「He Lives!」を意味し、ランブラキス暗殺後、軍事政権に反発する国民によってアテネの壁という壁に「Z」の文字が描かれたという。音楽はギリシャの国民的英雄であるミキス・テオドラキスが作曲。テオドラキス(1925〜)は、政治的にも活躍した人物で、1967年のギリシャ軍事政権時に政府に反発した彼は国外に亡命し、彼の音楽はギリシャで上演禁止となった。この「Z」にテオドラキスが書いた音楽も、自由への切実な叫びがこめられている。冒頭の「Main Title (Andonis)」は、ブーズーキを効果的に使った民族色の強いリズミックな音楽で、そのストイックなタッチが極めて感動的。続く「The Happy Youth」は、モンタン扮する政治家が空港に降り立つシーンの、物悲しい響きをもったこの上なくドラマティックな音楽で、このメロディは劇中で何度も登場する。「The Chase」は、陰謀の核心に迫ったシャルル・デネが暗殺者の車に追跡されるシーンのViolentなタッチの音楽。「Who's Not Talking About Lambri」は、トランティニアン扮する判事が、次々と政府の高級官僚を尋問していくモンタージュに重なるマーチ調のスコアで、ドラマのクライマックス。この映画のラストは、ジャック・ペラン扮するジャーナリストによるTVレポートから、極めて簡潔なエンディングとなるが、ここでの「Finale - The Happy Youth」も非常に感動的である。テオドラキスは、この作品以外に「エレクトラ」(1961)「死んでもいい」(1962)「その男ゾルバ」(1964)「トロイアの女」(1971)「セルピコ」(1973)「戒厳令」(1973)「風雪の太陽」(1973)「イフゲニア」(1978)「霧」(1989)といった作品を手がけている。このDRGレーベルの2枚組CDは、「Z」の他に「戒厳令」「セルピコ」「死んでもいい」のスコアを収録したコンピレーションになっている。

Mikis Theodorakis

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