レディ・プレイヤー1 READY PLAYER ONE

作曲・指揮:アラン・シルヴェストリ
Composed and Conducted by ALAN SILVESTRI

演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団
Performed by the Hollywood Studio Symphony

(米WaterTower Music / WTM40047)

   ★AMAZON.CO.JPで購入 

 ★TOWER.JPで購入


2018年製作のアメリカ映画。製作・監督は「リンカーン」(2012)「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015)「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」(2016)「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(2017)等のスティーヴン・スピルバーグ(1946〜)。出演はタイ・シェリダン、オリヴィア・クック、ベン・メンデルソーン、リナ・ウエイス、T・J・ミラー、サイモン・ペッグ、マーク・ライランス、フィリップ・チャオ、森崎ウィン、ハナ・ジョン=カーメン、ラルフ・アイネソン、スーザン・リンチ、クレア・ヒギンズ、ローレンス・スペルマン、パーディタ・ウィークス他。「ファンボーイズ」(2008)の原案・脚本を手がけたアーネスト・クライン(1972〜)の原作『ゲームウォーズ』を基に「ラスト・アクション・ヒーロー」(1993)「アベンジャーズ」(2012)等の原案や「インクレディブル・ハルク」(2008)等の脚本を手がけているザック・ペンとアーネスト・クラインが脚本を執筆。撮影はヤヌス・カミンスキー。1980〜90年代の日米ポップ・カルチャーの引用をふんだんに織り込んだベストセラー小説の映画化。2045年の地球。現実世界が荒廃する一方で、若者たちは誰もが好きなアバターに姿を変えて自分の思い描く通りの人生を生きることができるVRワールド“オアシス”に夢中になっていた。そんなある日、この仮想世界を開発し巨万の富を築いたジェームズ・ハリデー(ライランス)の死が伝えられ、オアシスに隠された謎を解き明かした者にすべての遺産を譲り渡すとの遺言が発表される。荒廃した街で暮らし、オアシスだけが心の拠り所だった17歳のウェイド(シェリダン)もその争奪戦に加わるが……。1980〜90年代の映画・アニメ・ゲーム等のキャラクターやヴィークルが全編を通してこれでもかと登場するレファレンスが圧巻で、ライセンサーからの許諾に1年以上かかったというが、「スピルバーグが監督する」ことで許諾をOKしたライセンサーも多いと思われ、その意味で彼は自身の映画界におけるポジションを最大限活用してこの原作を映画化したと言える。製作費は約1億7500万ドルで、2018年4月末時点の全世界興収は約5億4500万ドル。

音楽は「フライト」(2012)「REDリターンズ」(2013)「ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密」(2014)「ザ・ウォーク」(2015)「マリアンヌ」(2016)「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」(2018)等のアラン・シルヴェストリ(1950〜)。当初はスピルバーグ監督の永年のコラボレーターであるジョン・ウィリアムスがスコアを担当するはずだったが、同監督の「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」の仕事と重なったため断念。シルヴェストリはスピルバーグが製作した「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのスコアを手がけているが、監督作品のスコアを担当するのはこれが初めて。

(※以降、各トラックの紹介をする上で作品に登場する過去のキャラクターについて言及せざるを得ないので、映画を未見の場合はご注意)サントラ盤はCD2枚組で全22曲/約85分のスコアを収録。CD1枚目の冒頭「The Oasis」は、コーラスを織り込んだボレロ調の主題。「"Hello, I'm James Halliday"」は、オルガンによるJ・S・バッハ作曲の「トッカータとフーガ ニ短調」のイントロから荘厳でヒロイックなメインの主題へ。「"Why Can't We Go Backwards?"」は、ジェントルでリリカルな主題からヒロイックなファンファーレ、ミリタリスティックなサスペンスアクション、メインの主題へと展開。カーレースのシーンにキング・コングが登場するのでマックス・スタイナー作曲の「キング・コング」(1933)の主題の引用を含む。「An Orb Meeting」は、ダークでサスペンスフルな主題から明るく快活なマーチへ。「Real World Consequences」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽で、シルヴェストリ自身が作曲した「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主題の引用を含む。「Sorrento Makes an Offer」は、抑制されたサスペンス音楽。「Welcome to the Rebellion」は、ジェントルでヒロイックな主題から後半サスペンスフルなタッチへ。「High 5 Assembles」は、メインの主題からミリタリスティックなサスペンス音楽へ。「Orb of Osuvox」は、リズミックでダイナミックなサスペンス音楽。「Sorrento Punked」は、ダークなサスペンス音楽。「Wade's Broadcast」は、リズミックなサスペンス音楽からヒロイックでドラマティックな主題へ。CD2枚目の冒頭「Arty on the "Inside"」は、ビジーなサスペンスアクション音楽。「Looking for a Truck」は、メインの主題を含むダイナミックでパワフルなアクション音楽。メカゴジラの登場シーンで伊福部昭作曲のゴジラの主題が引用される。「She Never Left」「Last Chance」は、ダイナミックでストイックなアクション音楽。「"Get Me Out of This"」は、不気味なサスペンス音楽。「"Hold on to Something"」は、ストイックでドラマティックなタッチからリズミックなサスペンス音楽、メインの主題へ。「"This Is Wrong"」は、幻想的なコーラスの主題からダイナミックなサスペンスアクション音楽へ。「"What Are You?"」「"There's Something I Need to Do"」は、ジェントルでリリカルなタッチの曲。「Main Title」は、荘厳でヒロイックなメインの主題。「End Credits」は、ビジーでサスペンスフルなフレーズで始まりダイナミックなサスペンスアクション音楽、ヒロイックな主題等へと展開していくエンドクレジット。シルヴェストリのスコアも1980〜90年代を感じさせるちょっと懐かしいタッチ。

因みに、この作品以前のスピルバーグ監督作品(劇場公開作品)でジョン・ウィリアムス以外の作曲家がスコアを担当している映画は「激突!」(1971/ビリー・ゴールデンバーグ)、「カラーパープル」(1985/クインシー・ジョーンズ)、「ブリッジ・オブ・スパイ」(2015/トーマス・ニューマン)の3本のみ(オムニバスの1エピソードを監督した「トワイライトゾーン/超次元の体験」(1983)のスコアはジェリー・ゴールドスミス)。
(2018年5月)

Alan Silvestri

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2018  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.