「猿の惑星」シリーズの音楽
MUSIC FROM THE "PLANET OF THE APES"
猿の惑星
PLANET OF THE APES 作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス (米Varese Sarabande / VSD-5848) 1997 |
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フランクリン・J・シャフナー=ジェリー・ゴールドスミスの黄金コンビによる傑作。この作品については、1992年に米IntradaレーベルからリリースされたCDを「推薦サントラCD(Editor's Choices)」で紹介しているので詳細はそちらをご参照願いたいが、このVareseのCDは更に未発表曲を追加した完全盤で、特に前半の主人公たちが乗った宇宙船が不時着するシーンの「Crash Landing」や、ラストシーンの「The Revelation Part II」といった追加曲が聴きどころである。参考までに、「猿の惑星」の1992年のIntrada盤と、1997年のVarese盤の収録曲を以下に掲載しておく。
尚、この映画は2001年にティム・バートン監督によってリメイクされており(日本公開は2001年夏)、こちらの音楽はバートンの盟友ダニー・エルフマンが作曲している。出演はマーク・ウォールバーグ、ヘレナ・ボナム=カーター、マイケル・クラーク・ダンカン、ポール・ジアマッティ、エステラ・ウォーレン、クリス・クリストファーソン、チャールトン・ヘストン、ケイリー=ヒロユキ・タガワ、リサ・マリー、スパイク・ジョーンズ、ティム・ロス他。製作はリチャード・D・ザナック、脚本はウィリアム・ブロイルズ・Jr、特殊メイクはリック・ベイカー、SFXはILMが担当している。
<Intrada / FMT 8006D> 1992
1. Main Title (2:13)
2. The Revelation (1:34)
3. The Clothes Snatchers (2:38)
4. The Hunt (5:10) *
5. New Identity (2:04)
6. The Forbidden Zone (3:06)
7. The Search (4:56)
8. The Cave (1:19)
9. A Bid for Freedom (1:21)
10. A New Mate (1:05)
11. No Escape (5:17)
* Previously unreleased<米Varese Sarabande / VSD-5848> 1997
1. Twentieth Century Fox Fanfare (0:13)
(Alfred Newman, 1953 version)
2. Main Title (2:13)
3. Crash Landing (6:40) *
4. The Searchers (2:25) *
5. The Search Continues (4:55)
6. The Clothes Snatchers (3:09) **
7. The Hunt (5:10)
8. A New Mate (1:04)
9. The Revelation (3:20) **
10. No Escape (5:39)
11. The Trial (1:45) *
12. New Identity (2:24)
13. A Bid for Freedom (2:36) **
14. The Forbidden Zone (3:23)
15. The Intruders (1:09) *
16. The Cave (1:20)
17. The Revelation Part II (3:15) *
* Previously unreleased
** Contains previously unreleased material
続・猿の惑星
BENEATH THE PLANET OF THE APES 作曲・指揮:レナード・ローゼンマン (米FSM / Vol.3 No.3) 2000 |
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1970年製作の第2作。監督は「ダーティハリー2」等のテッド・ポスト。出演はジェームズ・フランシスカス、キム・ハンター、ロディ・マクドウォール、モーリス・エヴァンス、リンダ・ハリソン、ヴィクター・ブオノ、チャールトン・ヘストン、ポール・リチャーズ、ジェームズ・グレゴリー、ジェフ・コーリイ、ナタリー・トランディ、トーマス・ゴメス、グレゴリー・シエラ、ルー・ワグナー他。モート・エイブラハムズとポール・デーンの原案を基にデーンが脚本を執筆。撮影はミルトン・クラスナー。
第1作の主人公テイラー(ヘストン)を救出するため、彼の後を追ってやって来た宇宙飛行士ブレント(フランシスカス)を中心に、惑星の地下に住むミュータント人類と猿との闘いを描く。
音楽は当初第1作に続いてジェリー・ゴールドスミスが担当するはずだったが、彼がシャフナー監督の「パットン大戦車軍団」のスコアを作曲することになったため、「ミクロの決死圏」「指輪物語」等のベテランのレナード・ローゼンマンが起用された。第1作のゴールドスミスのスコアと同様前衛的な手法を採り入れた音楽だが、内容的には全くゴールドスミスのスコアの影響を受けていないところがローゼンマンらしい。「Main
Title」「Captured」「Target Practice」「Second Escape」等、明快なメロディがない抽象的なフレーズの積み重ねによりサスペンスを盛り上げていく非常に複雑な劇伴スコア。「Ape
Soldiers Advancing」での邪悪なタッチのマーチや「Hail the
Bomb」での不気味なコーラスも面白い。映画公開当時にアメリカのAmosというレーベルからサントラLPがリリースされており、ずっとこれがオリジナルスコアだと思っていたが、実はこれはアルバム用に小編成のオーケストラでわざわざ再録音されたもので、ロック風のアレンジになっていたりセリフが入っていたりする。ここで紹介しているFSMレーベルのCDには映画で使われたオリジナルスコアに加えて、このLP版の音楽も収録されている。
新・猿の惑星 ESCAPE FROM THE PLANET OF THE APES
作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH
(米Varese Sarabande / VSD-5848) 1997 (上記「猿の惑星」とのカップリング)
1971年製作の第3作。監督は「オーメン2/ダミアン」等のドン・テイラー。出演はキム・ハンター、ロディ・マクドウォール、ウィリアム・ウィンダム、リカルド・モンタルバン、ブラッドフォード・ディルマン、ナタリー・トランディ、エリック・ブレーデン、サル・ミネオ、アルバート・サルミ、ジェイソン・エヴァース、ジョン・ランドルフ、ハリー・ローター、M・エメット・ウォルシュ他。脚本はポール・デーン、撮影はジョセフ・バイロックが担当。前作で壊滅した惑星からテイラーの宇宙船を使って過去の地球にタイム・トラベルしてきた猿のジーラ(ハンター)とコーネリアス(マクドウォール)を描く。この作品以降、主人公が人間から猿に移る。
音楽は第1作のジェリー・ゴールドスミスが再登板しているが、メインタイトルはまるで刑事アクション映画のようなロック調のリズミックな音楽で、70年代にラロ・シフリンが書いていたアクションスコアを思わせるタッチ。このVareseのCDは上記「猿の惑星」と同じアルバムだが、このCDの最後に「新・猿の惑星」の16分27秒の組曲が収録されている。
これとは別にPony Expressというレーベルからやや音質が落ちる海賊盤CD(ゴールドスミス作曲の「悪魔のワルツ」とのカップリング)が出ており、これには以下のトラックが収録されているが、「Escape」「The Ship」等のサスペンスアクション音楽がゴールドスミスらしくて面白い。
<Pony Express / PECD 4001>
1. Main Title (2:31)
2. Testing (1:05)
3. Death (0:54)
4. Shopping (2:17)
5. Drugged / Questions (4:30)
6. A Child (1:05)
7. Escape (4:31)
8. Hunted (1:07)
9. Family (0:57)
10. The Ship (4:09)
11. Conclusion (1:07)
12. End Title (0:44)
<2009年10月追記>
米Varese Sarabandeレーベルよりコンプリート・スコアを収録したCDがリリースされている。3000枚限定プレス。
<米Varese Sarabande / VCL 0909 1098>
1. Main Title (2:32)
2. The Zoo (1:09)
3. The Gorilla Attack (:56)
4. I Like You (1:05)
5. Shopping Spree (1:23)
6. A Little History (1:23)
7. Interrogation (3:18)
8. Labor Pains (1:05)
9. Breakout (:37)
10. The Labor Continues (3:54)
11. The Hitchhiker (1:06)
12. Mother And Child (3:52)
13. The Hunt (4:08)
14. Final Chapter And End Credits (1:42)
猿の惑星・征服 CONQUEST OF THE PLANET OF THE APES 作曲・指揮:トム・スコット (米FSM / Vol.4 No.1) 2001 |
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1972年製作の第4作。監督は「ナバロンの要塞」等のベテラン、J・リー・トンプソン。出演はロディ・マクドウォール、ドン・マレー、リカルド・モンタルバン、ナタリー・トランディ、セヴァン・ダーデン、ハリー・ローデス、ルー・ワグナー、ジョン・ランドルフ他。脚本はポール・デーン、撮影はドン・シーゲル監督の作品等で知られる名手ブルース・サーティースが担当。
1991年の地球(前作の18年後という設定)を舞台に、コーネリアスとジーラの息子マイロ(マクドウォール)が、密かに訓練した猿たちを率いて、彼らを奴隷にしようとする人間たちに戦いを挑んでいく。監督のトンプソンと脚本家のデーンは、当時ロサンゼルスで起きた暴動をモデルにしてセミ・ドキュメンタリー的なタッチでドラマを描いたという。
音楽を担当したトム・スコットは、もともとジャズの演奏家として活躍しており、劇場用映画の音楽を作曲するのはこれが初めてだったが、予算の制限でゴールドスミスやローゼンマンといったベテランを雇うことができなかったFoxが、当時の音楽部長ライオネル・ニューマンの推薦により彼を起用することにした。スコットは「(TV)ミステリーゾーン」等を担当した映画音楽作曲家ネイザン・スコットの息子で、きちんとした音楽教育を受けており、この作品でも自分でオーケストラを指揮している。彼が作曲した「猿の惑星・征服」のスコアは、ジャズ畑の作曲家らしいコンテンポラリーなタッチも見られるが、基本的には前3作のゴールドスミスやローゼンマンの音楽に影響された前衛的なアプローチで、「Simian
Servant School」でのややコミカルなタッチや「Ape Auction /
Armando Dies」「Ape Revolt Begins」等でのサスペンスアクション音楽もなかなか上手い。もちろんベテランのゴールドスミスやローゼンマンのスコアと比べると、インパクトが弱くあまり強い個性を感じさせないが、これは比較するのが酷というものだろう。
トム・スコットが担当したその他の映画音楽には「男の出発」(1972)「爆走!サイドカーレーサー」(1975)「スター・クレイジー」(1980)「ハンキー・パンキー」(1982)「ファスト・フォワード」(1984)「ハード・ツー・ホールド」(1984)「シュア・シング」(1985)「彼女はハイスクール・ボーイ」(1985)「ミスター・ソウルマン」(1986)「(TV)ノックアウト」(1993)「(TV)マザーズ・プレイヤー」(1994)「(TV)地獄の穴」(1995)等がある。
最後の猿の惑星 BATTLE FOR THE PLANET OF THE APES
作曲・指揮:レナード・ローゼンマン
Composed and Conducted by LEONARD ROSENMAN
(米FSM / Vol.4 No.1) 2001 (上記「猿の惑星・征服」とのカップリング)
1973年製作の第5作で、これが完結篇。監督は前作と同じくJ・リー・トンプソン。出演はロディ・マクドウォール、ナタリー・トランディ、セヴァン・ダーデン、ジョン・ヒューストン、クロード・エイキンス、ポール・ウィリアムズ、リュー・エアーズ、コリーン・キャンプ、フランス・ニュイエン、オースティン・ストーカー他。ポール・デーンの原案を基にジョイス・フーパー・コリントンとジョン・ウィリアム・コリントンが脚本を執筆。撮影はリチャード・H・クライン。第2作で登場したミュータントの子孫が登場したりするストーリーだが、シリーズ中でも最も完成度の低い作品と考えられている凡作。第1作のロッド・サーリングとマイケル・ウィルソンによる脚本をリライトして以来、シリーズ全作を執筆している脚本家のポール・デーンが、ここでは原案だけで脚本に参加していないのも出来が悪いひとつの要因と考えられている。デーンは「戦慄の七日間」(1950)「007/ゴールドフィンガー」(1964)「寒い国から帰ったスパイ」(1965)「将軍たちの夜」(1966)「オリエント急行殺人事件」(1974)等を手がけているイギリスのベテラン。
音楽は第2作も担当したレナード・ローゼンマンで、前衛的なアプローチは前作と同じだが、ここでは全体を通してミリタリスティックで戦闘的なスコアを書いている。「Mutants
Move Out」「The Battle」「Fight Like Apes」といったアクションスコアもダイナミックで暴力的なタッチ。このFSMレーベルのCDは上記「猿の惑星・征服」とのカップリングになっている。
(TV)猿の惑星 PLANET OF THE APES (Television Series)
作曲・指揮:ラロ・シフリン
Composed and Conducted by LALO SCHIFRIN
(米FSM / Vol.4 No.1) 2001 (上記「猿の惑星・征服」「最後の猿の惑星」とのカップリング)
劇場映画の「猿の惑星」シリーズがTV放映されて高視聴率を獲得したことに気を良くしたFoxが映画版の主演俳優であるロディ・マクドウォールをキャストして1974年に制作したTVシリーズだが、結果としてさほど成功しなかった。音楽はラロ・シフリンがテーマ音楽を含めてアンダースコアの大半を作曲したが、ここに収録されている1分13秒のメインタイトルは、映画版のレナード・ローゼンマンのスコアに近いスタイルのダイナミックでサスペンスフルな音楽。TVシリーズのテーマ音楽にしては、あまり明確なメロディのない抽象的で複雑なスコアになっていて興味深い。これは上記FSMレーベルの「猿の惑星・征服」+「最後の猿の惑星」のCDにメインタイトルだけが収録されているもの。
この「猿の惑星」のTVシリーズの全エピソード14話を収録した完全盤DVDが2004年11月25日に東宝より発売されている。ロディ・マクドウォール(植木 等)、ロン・ハーパー(羽佐間道夫)、ジェームズ・ノートン(井上真樹夫)、ブース・コルマン(永井一郎)、マーク・レナード(小林清志)等、TV放映当時の日本語吹替音源も収録されている。
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