ELMER BERNSTEIN'S FILM MUSIC COLLECTION
太陽の帝王 KINGS OF THE SUN
作曲・指揮:エルマー・バーンステイン
Composed and Conducted by ELMER BERNSTEIN
演奏:プラハ市フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the City of Prague Philharmonic Orchestra
(米Film Score Monthly / FSM Box 01 - Disc 12)
1963年製作のアメリカ映画。監督は「ナバロンの要塞」(1961)「隊長ブーリバ」(1962)「恐怖の岬」(1962)「マッケンナの黄金」(1969)等のJ・リー・トンプソン。出演はユル・ブリンナー、ジョージ・チャキリス、シャーリー・アン・フィールド、リチャード・ベースハート、ブラッド・デクスター、バリー・モース、アーマンド・シルヴェストル、レオ・ゴードン、ヴィクトリア・ヴェトリ、ルディ・ソラリ、フォード・レイニー、ジェームズ・コバーン(ナレーション)他。エリオット・アーノルドの原案を基にエリオット・アーノルドとジェームズ・R・ウェッブが脚本を執筆。撮影はジョー・マクドナルド。中南米に栄えたマヤ文明を主題とした史劇アドヴェンチャー。トルテック族の襲撃により王族たちを殺されたマヤ族のバラム王子(チャキリス)は、テキサスへと逃げ延び、アパッチの酋長ブラック・イーグル(ブリンナー)と手を組んで、追撃してくるトルテック族と戦う……。
音楽はエルマー・バーンステイン。「Main Title」は、パーカッションによるイントロから、躍動的でダイナミックなメインタイトルへと展開。ここで登場するヒロイックなブラック・イーグルの主題がバーンステインらしい。「Love That Parade」は、ピラミッドへの行進のシーンのエキゾチックな舞踏音楽で、この主題は「Honorable Parade」でも登場。「Away We Go/Beach Meeting」「Peeping Eagle」はサスペンス調。「Shove Off」はアクション音楽。「Let Us Pray」「Rejected」は躍動的なタッチ。「Please Sleep」「Real Crop」「Go to Him」は、ジェントルなタッチ。「Surrender Threat」「Stabbed」は、ブラック・イーグルの主題を含むダイナミックでパーカッシヴなアクション音楽で、まさに“クラシック・バーンステイン”。「Dependable/Curtain」は、舞踏音楽風の曲からフィナーレへ展開。「Concert Suite」は、ブラック・イーグルの主題を中心に各主題を織り込んだコンサート用の組曲。
このスコアにはサントラ盤も出ているが、ここで紹介しているのはエルマー・バーンステイン自身が2003年11月にチェコのプラハ市フィルハーモニー管弦楽団を指揮して新規に録音したもので、これは彼の生前の最後のレコーディングとなった(2004年8月18日没)。このCDは2006年7月に米Film Score Monthly(FSM)レーベルがリリースした「Elmer Bernstein's Film Music Collection」の12枚組ボックスセットのボーナス・ディスクとして収録されたもの(2,000セット限定)。
この「Elmer Bernstein's Film Music Collection」は、エルマー・バーンステインが1974年から1979年にかけて私費を投じて録音し、LP盤でリリースしたクラシック・フィルムスコアの新録音シリーズで、当時は会員限定のメールオーダーのみで販売されていた。会員は10ドルの会費を支払い、年間2枚のLP(各8ドル+送料)を購入する仕組みになっており、バーンステインは全世界に10,000人〜15,000人のコアなクラシック・フィルムスコアのファンがいると予想していた(それならば採算が取れると読んでいたのだろう)。しかし、実際には会員数は2,000人にも満たず、各2,500枚ずつプレスしたLPの平均的な販売数は1,400〜1,800枚で(それでもバーナード・ハーマン作曲の「幽霊と未亡人」と「引き裂かれたカーテン」のアルバムは売り切った)、バーンステインは個人的に多額の負債を抱え込んだ。現在FSMレーベルが定期的にリリースしているサントラ盤のシリーズも3,000枚限定プレスで、そのごく一部しか売り切れていないことを考えると、未だにコアなサントラ・ファンの数は全世界で2,000人弱なのかもしれない。
バーンステインはこのシリーズのCD化を何度も持ちかけられたが、頑なに拒否し続けた。業界関係者の間では、彼が自らCD化するつもりなのだろうと考えられていたが、結局それは実現しなかった(個人的に損失を被ったプロジェクトであり、他の人間に儲けさせるより自分でCD化して再発したいとの思いだったのだろう)。今回FSMがこのシリーズをCD化するにあたり、バーンステイン自身が直面していたであろう幾つかの問題点が表面化した。まず第一に、バーンステインが1/4インチ・ステレオマスターテープを保有していたのは最初の5アルバム分だけで、それ以降のアルバムのマスターは実際に録音を行ったオリンピック・スタジオが閉鎖時に何の予告もなしに全て廃棄してしまっていた(このように無思慮な経営者の判断により貴重な歴史的音源が廃棄されてしまった例はよくある)。幸いなことに、マスターを廃棄されたアルバムの内、「バグダッドの盗賊」「アラバマ物語」「引き裂かれたカーテン」の3作品は1978年にワーナー・ブラザース・レコードで再発されており、今回のCD化ではワーナー側に保管されていたマスターを使用することができた。マスターテープが一切存在しない「嵐ケ丘」「革命児サパタ/セールスマンの死」「ボヴァリー夫人」「ピラミッド/OK牧場の決斗」「紅の翼/世界の楽園」の5アルバムについては、バーンステインが保管していた未開封のLP盤をマスターにしてCD化が行われた。
尚、この「Elmer Bernstein's Film Music Collection」シリーズの1枚として、ジェリー・フィールディング作曲の「スコルピオ」のサントラLP(FMC-11)がリリースされているが、このアルバムは1991年に米Bay CitiesレーベルによりCD化されており、今回のボックスセットには含まれていない。また、バーナード・ハーマンの「幽霊と未亡人」については、米Varese Sarabandeレーベルがバーンステインとのディールにより1985年にCDをリリースしている(VCD-47254)。
上記「太陽の帝王」の録音は、「Elmer Bernstein's Film Music Collection」のシリーズとしてLPが出ていたものではなく、バーンステイン自身が運営していたAmber RecordsレーベルよりCDがリリースされる予定だったものだが、コンセプト的には過去のシリーズを継承するものであり、バーンステインの音楽家としての生涯のコーダにふさわしい録音として、このセットのボーナスディスクに収録されたものである。
<収録作品(指揮はすべてエルマー・バーンステイン)>
DISC 1:
「トロイのヘレン(Helen of Troy)」(1956)
「避暑地の出来事(A Summer Place)」(1959)
作曲:マックス・スタイナー
Composed by Max Steiner
DISC 2:
「奇蹟(The Miracle)」(1959)
「(未公開)Toccata for Toy Trains」(1957)
「アラバマ物語(To Kill a Mockingbird)」(1962)
作曲:エルマー・バーンステイン
Composed by Elmer Bernstein
演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the Royal Philharmonic Orchestra
DISC 3:
「銀の盃(The Silver Chalice)」(1954)
作曲:フランツ・ワックスマン
Composed by Franz Waxman
DISC 4:
「幽霊と未亡人(The Ghost and Mrs. Muir)」(1947)
作曲:バーナード・ハーマン
Composed by Bernard Herrmann
DISC 5:
「悲恋の王女エリザベス(Young Bess)」(1953)
作曲:ミクロス・ローザ
Composed by Miklos Rozsa
DISC 6:
「嵐ケ丘(Wuthering Heights)」(1939)
作曲:アルフレッド・ニューマン
Composed by Alfred Newman
DISC 7:
「バグダッドの盗賊(The Thief of Bagdad)」(1940)
作曲:ミクロス・ローザ
Composed by Miklos Rozsa
演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、サルタレロ合唱団、ブルース・オグストン(バリトン)、フィリス・キャナン(メゾ・ソプラノ)、パウエル・ジョーンズ(アブ役)
Performed by the Royal Philharmonic Orchestra and the Saltarello Choir; Bruce
Ogston, Baritone; Phyllis Cannan, Mezzo-Soprano; and Powell Jones as "Abu"
DISC 8:
「革命児サパタ(Viva Zapata!)」(1952)
「セールスマンの死(Death of a Salesman)」(1951)
作曲:アレックス・ノース
Composed by Alex North
演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the Royal Philharmonic Orchestra
DISC 9:
「引き裂かれたカーテン(Torn Curtain)」(1966) リジェクテッド・スコア
作曲:バーナード・ハーマン
The Unused Score Composed by Bernard Herrmann
演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the Royal Philharmonic Orchestra
DISC 10:
「ボヴァリー夫人(Madame Bovary)」(1949)
作曲:ミクロス・ローザ
Composed by Miklos Rozsa
演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the Royal Philharmonic Orchestra
DISC 11:
「ピラミッド(Land of the Pharaohs)」(1955)
「OK牧場の決斗(Gunfight at the O.K. Corral)」(1957)
「紅の翼(The High and the Mighty)」(1954)
「世界の楽園(Search for Paradise)」(1957)
作曲:ディミトリ・ティオムキン
Composed by Dimitri Tiomkin
演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団・合唱団、ブルース・オグストン(バリトン)
Performed by the Royal Philharmonic Orchestra, Soloists & Chorus & Bruce Ogston
(Baritone)
DISC 12(ボーナスDisc):
「太陽の帝王(Kings of the Sun)」(1963)
作曲:エルマー・バーンステイン
Composed by Elmer Bernstein
演奏:プラハ市フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the City of Prague Philharmonic Orchestra
(2006年9月)
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